女は広島の山間から、男は四国の松山から、時を同じくして裸一貫の旅に出た。日露戦争を目前に探え近代日本は興隆の頂点をめざしていた。門司港の石炭荷役に携っていた二人の若者は、運命の糸に操られるように殺伐たる九州の港を流れるなかで結ばれ、転変の人生をともに歩みはじめる。玉井金五郎の侠気とマンの心意気、その底に通いあう細やかな愛情。著者天性の雄渾なロマンみなぎる名作。
喧嘩と暴力が日常の沖仲仕の上にも、近代化の波は押し寄せる。巨大資本による石炭積み込みの機械化が企てられ、若松港で玉井組の親方となった金五郎は、荷主側との交渉に身体をはった。争議、脅迫、奸計、ヤクザとの生命をかけた抗争…。時代の激流と沖仲仕の独特な信念がひきおこす事件の連続のなかに、明治の男と女の豪放で繊細な交情を鮮やかに定着させた、痛快無類、興趣抜群の自伝的長編。
子どもは本当に喜んで学校に行っているのか。子どもが学校に行くのは当たり前か。いま、大人の常識や枠組みを問い直し生きものとしての子ども「個育ち」を考える。登校拒否と学校のあり方を問う渡辺位講演集。
2500年の長きにわたって、人間の知をあざ笑いつづけてきたゼノンの逆理。その謎が精緻に解かれた時、行く手に姿を現した巨大な暗影とは-。白熱の哲学エッセイ。
登場する10ぴきのくまたちは、それぞれの夢をかなえたいといつも思っている。はちみつがだいすきなはちみつぐまは、じぶんのはちみつつぼをいっぱいにしたいと思っているし、じまんのながぐつをはいた、ながぐつぐまは、もっと大きな水たまりに飛び込みたいと願っているし、口がいつもまっすぐなしょんぼりぐまは、みんなと同じように笑ってみたいし…。おやすみ前の静かなひとときに、1話ずつ、ゆったりとお楽しみください。読んでもらうなら3才から。
14人の子どもが犠牲になった山中のスクールバス事故がもたらした衝撃。悲劇に直面した人間の心の傷を、現代アメリカ文学の巨人が深く見つめ、包みこむ感動の長篇。
ライルはゆかいなワニ。ライルがいるだけでだれもがたのしくなる。ある日、ライルはプリムさんのしごとばへつれていってもらうことになった…。小学校初級以上。
流れる血のなかに一匹の獣がいた。胸に弔いの十字架。背中に憤怒の烙印。山県龍二、十七歳。汚れなき闘争本能が牙を剥く。血涙を呼ぶ剛腕小説。
十二世紀初頭、商業の発展で繁栄を誇った北宋の首都・〓京(開封)。宮城から街衢におよぶ広範な描写に、百万を数えた宋代都市民の活気に満ち溢れた生活がよみがえる。新図版多数。百万都市宋都繁昌記。
川は流れていないかのように堂々とおちつきはらい、ゆうゆうといそぎもせず流れる。柊子の喜びも哀しみものみこんで…。人生を川に託す三部作完結編。
フジテレビ系ポンキッキーズでおなじみのアニメ『花子さんがきた』の原作本第7巻。
本書は、易という長い伝統がある東洋の占いと、ユング心理学という西欧の伝統から生まれた心理学を重ね合せて考えていこうという視点で書いたものです。ですから、ふつう易で占う社会の動きや、それにともなう人間の運、不運だけではなく、その運命に大きくかかわるその時どきの個人の心の動きを、一緒に読んでいこうとするものです。
本書では、できるだけ多くの人たちに楽しんでもらうために、盆栽を伝統的なものとしてではなく、“鉢植えの樹木”としてとらえている。日常の手入れのしかたと美しい樹形に整える基本テクニック、そしてポピュラーな34樹種を取り上げて、整姿・剪定のポイントをわかりやすく解説。
地獄の関東大震災から3年後。大正15年。神島桐子は、先代の神島家の当主、兄史人の急死をうけて神島家の当主となった。桐子、わずかに10歳。神島家の使役鬼たる弓生と聖は、桐子の術修業を助けるべく東京にいた。だが、術修業とは名ばかりで、実は中央の術者を呪詛するためであった。命じたのは、桐子の後見役を任じる狩間久義。中央の術者の一部が体制の転覆を謀っているのだという。その数13名。-しかし、事の成り行きに胡散臭いものを感じた弓生と聖は、その背後にあるものを探り出しにかかるが…。感動の名作、後編。
外国の人と話すとき、必ず出てくる話題は「日本」のこと。でも英語力よりも前に困るのは、日本について知らないことがいっぱいという事実です。モヤモヤの知識をスッキリさせてくれる「日本再発見」の書。対訳。