1部の有閑階級の独占物であった絵画を、広く“ブルジョワ公衆”のものに転化させようという、19世紀中葉の美術革新期にあって、その最も尖端的なイニシアチヴをとったのが、美術批評家ボードレールであった。批評家の任務とは、芸術家の創造する美をその享受者たるべき広衆に啓蒙することである、との考えに基づくボードレールの批評活動を、ドラクロワ・クールベ・マネらとの交渉を軸にして詳細に論考する。
メランコリー。人間の体内に存在する四つの体液の一つである黒胆汁によってもたらされ、土星の下に生まれたものの運命であるとされる。そして、それは人間を憂鬱におとしいれ、その意識を鈍磨させるとされた。古代ギリシアに淵源するこの体系は、西欧の自然哲学、医学・宗教、芸術の根幹に脈々と流れ、それらに大きな影響を及ぼし続けた。ピタゴラス学派、アリストテレスから、中世アラビアの占星術師、ルネサンスのネオプラトニストを経て、北方ルネサンスの巨匠デューラーに至るまで、この体系の起源と展開を精細にあとづけ、近代思想によって駆逐されたかに見える、破壊的なまでに洞察力にみちた人間観を発掘、まさにヴァーブルク学派の代表的成果というにふさわしい大著。
本書は、クヌース先生の著作およびクヌース先生の仕事に関する解説の中から、プログラム論、アルゴリズム論、TEXプロジェクト、文芸的プログラミングの4点をそれぞれ1〜4章として採りあげ、最後の5章にクヌース先生の生活のインタヴュー記事2本を添えた。
本書は、スペイン建築を理解するための最良の理論書であり、古典とも言える著作である。特にイスラムという東洋建築との比較において、西洋建築一般をも理解させてくれる。スペイン建築の他、中南米建築とアルハンブラ宮殿の緒論も収める。
鋭い感性で、独特の「パリ風景」を残し、閃光のように消えていった天才画家・佐伯祐三。その画業と生涯。新発見の絵3点収録。
本書では、音楽を単なる音、音の運用の技術とせず最も人間的な行動として文化の中に位置づけ、音・音楽・音楽学・芸術学の相互関連の中で、生きた音楽の諸相を照らしだす。
上へ下へ勢いよく飛び跳ねる魚。絵柄と背景が反転、魚へ変身する鳥。湧くように噴き出し、四方八方へ成長していくチョウの大群…。制作ノートや下絵、関係者の“証言”をもとに、その独自の画風が形成された経過を徹底追跡。美術と数学が華麗に結ばれた例がここにある。
クロマニヨン人は何のためにつくり、そして、どこへ行ったのか?遺跡年代測定の権威が謎に挑む。洞穴壁画の謎を追う。
近代資本主義下の科学と科学技術に支配された人間と時代の病弊を芸術と芸術家に論及し暴き出し、プラトン、ゲーテ、ユングらを援用しつつ、真の芸術と呼ぶ創造的営為および人間的回復への方途を探った記念碑的著作。
戦後イギリスを代表するモダニスト・デザイナーのひとりサー・ミッシャ・ブラックの思想の精髄を示す遺稿選集。「近代のデザイン」の価値と理念をあまねく提唱・主導し、1930年代から今日に至るまで世界の産業界・教育界をはじめ多岐に亘る分野に影響を及ぼしてきた彼の生涯と業績は、インダストリアル・デザインの歴史におけるひとつの里程標を示す。彼が展開した思考と実践の軌跡をたどり、その分析的な接近法と明確な心的態度を通して、デザインプロセスの複雑さを理解する好篇。
ベルニーニとともにイタリア・バロックを代表する建築家ボッロミーニの生涯と業績を簡潔に論じたモノグラフ。著者アルガンはイタリアを代表する美術評論家で、本書は、示唆に富む優れたバロック論として高く評価されている。
ガウディ研究第1人者が最新資料多数を駆使してガウディの不可思議な建築に秘められた謎を解き明かす。