メディチ家はなぜ芸術を擁護したのか。ローマ教皇庁と結びついて発展したメディチ銀行には利息をとることを罪とする宗教思想との矛盾があった。ペスト、政争、戦争を生き抜く姿が描かれる。15世紀フィレンツェに現代社会を見る。
“真理の山”に作家は何を求めたのか?生身の作家と預言者たちの群像。20世紀初頭、若き作家は“生活改革運動”の影響下、スイスとイタリアの国境地帯にあるアスコーナの地モンテ・ヴェリタに滞在し、自然回帰を志向する放浪の思想家や芸術家らと裸体生活・菜食主義を試みた。複数の小説作品に大きな痕跡をとどめながらも正面から論じられずにいたこの反文明体験の全容を明るみに出す好著。日本の少女マンガにも影響を及ぼした精神/身体文化の源泉に迫る。
アートはなぜアートなのか?アートをアートたらしめているものとは何か?マルセル・デュシャンの「泉」から一世紀を経て、芸術の未解決問題に挑む、待望の現代アート論、堂々の刊行。
『ロシアのレオナルド・ダ・ヴィンチ』と呼ばれ、宗教学者、自然科学者、司祭、歴史家、文献学者、発明家、技術者、詩人など、さまざまな領域で驚くべき天才ぶりを発揮したパーヴェル・アレクサンドロヴィチ・フロレンスキイ。「逆遠近法」の概念を軸に、中世イコンの精緻な幾何学的読解を試みた芸術論をはじめ、ポリグロットならではの周密な固有名詞論を展開した「哲学的前提としての賛名」など、二十世紀ロシア文化史上ひときわ異彩を放つ思想家の、言語・芸術分野の代表的論攷を本邦初訳で収録。
いまから67年前、テレビは本放送を開始した。それは戦後文化の象徴の一つとなったが、当初からその大衆志向性が批判されることも多かった。そうしたテレビの青春期ともいえる1950年・60年代には、どのようなテレビドラマが制作されていたのだろうか。当時の映像がほとんど残されていないなかで、映像が現存する「芸術祭受賞作」を中心に検討し、そこに積極的に関与した文学者と、気鋭のディレクターとが追求したテレビドラマの可能性とその時代を丹念に描く。
音と芸術をめぐる新鮮な考えかた、語りかた、聞きかたを見つけるために。音と芸術をめぐる本、40冊についての書評、気鋭の論者たちが80冊以上を紹介しながらサウンド・スタディーズの現在を検討する座談会を収録。サウンド・スタディーズとサウンド・アート研究の動向、広がり、そして、その来し方、行く末を一望できる画期的なブックガイド。
ドビュッシーに「石をも踊らせる恐ろしいが魅力的な男」と言わせた美の魔術師。20世紀芸術を方向づけたバレエ・リュスの生みの親ディアギレフの、華麗にして悲劇的な人生を描く画期的な評伝。
町の仏師から日本を代表する木彫家、帝室技芸員、東京美術学校教授へと登りつめた高村光雲。巨大な父の息子として二世芸術家の道を定められながら、彫刻家としてよりもむしろ詩人として知られることになる高村光太郎。そして、刀工家に生まれた不世出の大工道具鍛冶、千代鶴是秀。明治の近代化とともに芸術家へと脱皮をとげ栄に浴した光雲は、いわば無類の製作物を作る職人でありつづけた。その父との相似、相克を経て「芸術家」として生きた光太郎の文章や彫刻作品、そして道具使いのうちに、著者は職人家に相承されてきた技術と道徳の強固な根を見る。戦後、岩手の山深い小屋に隠棲した光太郎が是秀に制作を依頼した幻の彫刻刀をめぐって、道具を作る者たち、道具を使って美を生みだす者たちの系譜を描く。
マティスは絵画と彫刻という伝統的な芸術ジャンルにおいてだけでなく、陶器の絵付け、舞台の衣装や装置のデザイン、そして建築の装飾などの幅広い領域において活動していたのである。
母親との確執ののち、旧態依然の芸術観に囚われた日本を飛び出し、単身渡米した草間彌生。幻覚や心の病と闘いながらも、芸術によって社会的因習を打ちこわし、世界的アーティストへと上りつめるまで。女性、そしてアジア人でありながらも世界中を魅了してきた彼女の挑戦の軌跡を辿る。草間彌生の人生を鮮やかに描いたイタリア発グラフィック・ノベル。
近代保存修復学のパイオニア、チェーザレ・ブランデイの理論を軸に技法と思想をつなぎ直す。作品の価値とは何か、オリジナルとはいかなることか。現代美術にまで対象を広げ、芸術を語る新たな批評言語の創造へ向けた、気鋭の若手研究者/修復士による意欲作。
女性として、芸術家として、フィンランドにおいてスウェーデン語を話す言語的少数派として…困難を抱えつつもしなやかに時代を切り拓いたトーベ・ヤンソンの波乱の人生と、繊細な創作の源泉に触れた決定版ビジュアルブック。