深夜零時。土砂降りのなか飲酒運転していた弁護士フランクは、酔いと仕事への鬱憤から激情に駆られ、自分のBMWをエクスプローラーに追突させる。それにより夫とおなかの子供の命を奪われたFBI捜査官チャーリーは、捜査担当をはずされても犯人を追う。追いつめられたフランクは、狂った糸に操られるように凶行を繰り返し…名手がフロリダを舞台に描く狂熱のサスペンス。
古都の因習に名探偵、惑う!妖艶な和服美人の依頼をきっかけに伊集院は「幻の友禅」を巡る事件に巻き込まれた。
「何者じゃ」夜回りの老局は思わず誰何した。奥州棚倉の城主、勝田駿河守の上屋敷の闇に男が蹲っている。「土蜘蛛の精…」名乗ったその顔は幽鬼のものであった。折しも婚儀定まった姫を案じて寝所に踏み入った局の見たものは、無惨な姫の姿。姫が自害して果てたのは間もなくである。勝田の家を呪うのは、いったい何者?もと歌舞伎役者の色男、文七が陰謀に迫る。
人並みはずれた聴覚を獲得してしまった男。彼は自分を殺そうとした相手をつきとめるため、ある女を捜そうとする。彼女の残した「音の記憶」を頼りに。新感覚書き下ろしハードボイルド。
ウラ師の右京は蔓草という掏摸の秘技を教わった与平から、政商杉本茂十郎失脚後の辻斬り事件の捜索を依頼される。与平の腹違いの兄が新任の北町奉行の内与力だからだ。与平によると上方の掏摸集団女郎蜘蛛一味が右京を狙って江戸入りしたという。右京は猿の長吉より預かった黒達磨とあわせて、旗本柴田大膳の屋敷より黄達磨を盗みだす…。能面の辻斬り集団や女郎蜘蛛一味の妨害が。書下し長篇時代小説。
箱根山中の別荘で、厚務省次官が喉に咬傷を遺して怪死した。その直前、管理人が庭先で見た巨大なクモ!さらに付近のホテルで米国人女性も巨大グモを目撃していた。その毒蜘蛛が、今度は奈良県の八瀬寺に現れ、大僧正を襲った。日本に生息していないはずの巨大毒蜘蛛。二階堂警視は、合同捜査連絡会議を組織し、捜査に乗り出す。著者会心の長編ミステリー。
デザイナーの卵・アマンダはあるとき母親から、出生時に産院で別の赤ん坊と間違えられたことがあると、聞かされる。見ず知らずの「間違えられた」相手に惹かれた彼女は、それが著名な画家ギャリスンの息子ソーンだと知る。「もしや私の本当の父親は…」ロマンチックな興味からギャスリン家を訪ねた彼女は、彼の莫大な財産をめぐる巧妙な殺人計画に気づくが、殺人者の魔手は彼女に伸びてきた!サスペンスの女王渾身の傑作。
華の吉原で父親から馬屋稼業を引を継いだ弁天屋おえんは、見世からの依頼で、客が払わないツケを取り立てるのが商売だ。江戸の不夜城吉原の表面の派手さの裏では、いつも悪党どもがうごめいているのだ。おえんは見世との証文を持って取り立てに命を張り、得意の鉤縄が飛ぶ-。表題作ほか六本を収録した連作短編集。
御存知揉め事処理屋・醍醐蘭馬。今回のお相手は、宿命のライバル・紅蜘蛛男爵こと紅蓮田十馬。奥秩父に建つ謎の洋館に捕われた美人ライターを救うため、そして積年の恨みつらみを晴らすため、毒蜘蛛VS毒蜘蛛の凄絶な死闘がいま、始まる-。
深夜の怪談会の帰り、タクシーの中で私を襲った事件とは。人間の皮膚に卵を生み付ける「くすね蜘蛛」の恐怖を描いた表題作をはじめ、三浦朱門とともに、熱海の宿で悪夢の一夜を過ごす体験談「三つの幽霊」、先祖の遺品を蒐めることにとりつかれた男の末路「憑かれた人」など、ユーモラスな語り口を駆使しながら、読者を恐怖の世界に案内する周作恐怖譚・全21話。世評高い傑作短編集『蜘蛛』を完全収録、さらに現在の文庫では手に入らない幻の作品も多数加えて再編集した、遠藤周作怪奇小説の決定版。
遊廓の艶冶な悪党に鉤縄飛ばして一件落着。花の吉原「犯科帖」。
芥川がいつも冷たい皮肉屋であったわけではない。むしろ本当に願ったものは、人間の本来持っているやさしさである。そのような芥川のやさしさが出ている作品を主とし、さらに空想的世界のひろがりを見せてくれる伝奇的な作品等をえらぶことにした。小学上級以上。