「神は死んだ」「ニヒリスト」「超人」等、幾多の刺激的な啓示を遺して散った巨人ニーチェ。徹底的な西欧文明批判に始まり、詩であり友であったワーグナーとの別離、そして永劫回帰説から生のディオニソス的肯定へと続く彼の思想は、現在もなお色褪せることなく燦然と輝いている。躍動感あふれる彼の哲学的叙事詩の全体像を分かり易く体系的に捉えた本書は、まさに若き人々に贈る格好のニーチェ入門の書である。
眠りは死よりも愉快である。少くとも容易には違いあるまいー。鋭敏な頭脳と表現力を無尽に駆使し、世に溢れる偽善や欺瞞を嘲る。死に取り憑かれた鬼才の懐疑的な顔つきと厭世的な精神を鮮烈に伝えるアフォリズム(『侏儒の言葉』)。自らの人生を聖者キリストに重ね、感情を移入して自己の悲しさ、あるいは苦痛を訴える(『西方の人』)。自殺の直前に執筆された芥川文学の総決算。