本書は、西洋の翻訳理論を土台とし、言語学的アプローチに基づく古典的な翻訳理論群から、文化翻訳を含む最近のモデルまで翻訳理論の展開を考察している。焦点になるのは、等価、機能主義、記述的翻訳研究、翻訳の不確定性、ローカリゼーション、文化翻訳といった中核的パラダイムおよびその関連理論である。ポストモダン・カルチュラルスタディーズや社会学のモデルとして翻訳を扱うアプローチにも触れ、従来の翻訳の概念を超えた取り組みが紹介されている。各理論の系譜や繋がり、パラダイム間の相違点、また、各パラダイムに対する批判あるいは擁護が明確に提示され、各章末の課題によって、翻訳事象に対する読者自身の問題意識を喚起しようとしている。著者の翻訳学への情熱と健全な批判精神がみなぎる一書である。
メラネシア・フィジーにおいて三十年ぶりに開催された最高首長の即位儀礼。そして、植民地期以来、土地と社会集団の所有関係を規定してきた古文書。この二つの「詩的テクスト」の記号論的繋がりーメタプラグマティクスーを、儀礼スピーチや神話的語りの緻密な記述、分析を通して審らかにする言語人類学的エスノグラフィー。
文字によらない伝承文化、口頭伝承を音、声、図像、身体性、場といった諸科学の根底に関わる要素から詳細に分析し、壮大な理論的構築をはかる、人類学的思惟の結節点を示す記念碑的労作。
この辞典は、現代の用語、日常生活のさまざまな分野でことばとして遭遇する事項、百科の万般にわたって項目を精選し、それぞれに簡潔な説明ができるように企画したものである。項目の選定は、「日本国語大辞典」(全20巻・縮刷版全10巻)、「国語大辞典」(全1巻)を基礎にして、これに新たな項目を補った。収録した項目は、現代語・日常基本語から、地名・人名・書名などの固有名詞、各分野での専門用語、時事用語など多岐にわたり、15万項目余である。
環北太平洋文化圏。類型を異にする驚くほど多種多様な言語が密集した広大な言語の森。消滅の危機に直面する、これら北方諸言語の比較・分析を通して、言語学の未来に新たな視角を切りひらく。