フォスラーは、人間のすぐれて精神的な活動である〈ことば〉を〈もの〉のように扱う実証主義者に、クローチェの美学をもって対決し、音・形態・統辞のあらゆるレベルに美的創造のはたらきを認めた。〈いかに微弱な人間の心にも、なおかつ独自の自由な言語の神のひらめきがある〉とは、彼の言語学的思索のライトモティーフである。かくして、彼の《言語美学》により、言語研究は文体論へと還元され、言語史は表現の歴史として文化史の一部門となった。
言語・身体・図像。「はなす」「かたる」「うたう」といった言語行為を成り立たせている言語共同体の「相互主体性」の検討へと深化する思考の結晶群。
同一事象に対しヒトはなぜ異なった言語表現を用いるのか。認知論的言語観を基盤とし〈意味〉を求めて鬱蒼とした言語の森に分け入り多岐に亘る言語事実と正対することによりまったく新しい文の意味構造を明らかにした。
「サピア=ウォーフの仮説」をめぐる必読の論文集。
本書は非言語性学習能力障害(nonverbal learning disability=NLD)症候群の諸要素とその力動とに関するものであり、学習能力障害(LD)の神経心理学の理論的、応用的側面と児童臨床神経心理学の総論的な立場からNLD症候群を取り上げその説明のためのモデルの改善も試みた
重い知的障害をもちながら20ヵ国語を読み、書き、話すクリストファの謎、その知的障害と非凡な言語能力との極端なズレをどう理解するか。彼は、人間一般の脳のしくみと働き、言語と思考の関係について何を語るか。
犯罪の歴史はそのまま人類の歴史である。古くは宗教的タブーから誕生し、近代にいたって社会的に禁止された行為として規定されるまで、犯罪は「最古の社会問題」であった。しかし、学問的対象として犯罪学が誕生したのはようやく前世紀末においてのことである。著者は本書において、個々の現象としての犯罪行為を通してトータルな人間理解を試み、犯罪学を人間科学として捉え直すことによる、新たな「犯罪精神病理学」の構築をめざしている。本書の大きな特徴は、暗殺や大量殺人、ストーカー犯罪、ハイジャック犯罪など従来わが国の犯罪学研究においてはあまり顧みられることのなかった分野や、最近顕著になりつつある話題性に富んだ主題が扱われている点である。また、著者は最近の少年犯罪の質的な変化に着目し、この変化を「自己確認型」非行・犯罪と規定、表現し、「空虚な自己」「のび太症候群」などの独自の鍵概念、用語を用いて、現代青少年の心理的背景を分析し、現在頻発する犯罪と狂気を鋭く考察する。