本書は、現代英語の強勢とリズムについて、変異(ヴァリエーション)を出発点として音楽との接点を切り口に、英語の好韻律性を探る第1部と、英語と日本語の分節音と韻律構造が通時的に変化してきた過程を考察し、音韻変化の法則を発見する第2部からなる。いずれも、言語の変異と変化という視点から、分析対象とする現象を音韻理論がどう扱ってきたかを概観し、2人の著者の研究成果を紹介しながら今後の展開の方向性を示す。
現代中国語はSVO言語でありながら前置詞句が述語に前置される。この状況は世界の言語にほとんど類例を見ないという。本書はこの語順の謎に言語類型論の視点から挑んだ。
本書は、子どものメタファー・アイロニーの習得過程、それらの習得がなぜ遅いかの解明への試みである。認知言語学などのメタファー研究、発達心理学の「心の理論」、語用論などのメタファー・アイロニー研究をユニークな視点で結びつけており、初等教育における日本語・英語の指導や、障害児の言語理解が注目される今こそ、研究者、学生、自閉症・アスペルガー症候群の子どもの教育者、子を持つ親に読んでほしい一冊である。
本書は、私たちがコミュニケーションを行う背景にはどんな仕組みがあるのかという問いについて、一緒に考えていくために書かれたものである。
言語表現を用いる時、その表す意味が何であるかは、他の表現との関係や、その表現から推論を経て示唆される意図、その使用される場面や状況との関連性など様々な要因が絡み合って決定される。本書は言語使用における意味を中心に、意味論、語用論、構文文法、認知文法、言語人類学、社会言語学といった多岐にわたる分野の研究の流れを概観し、その最新の発展についての知見を得ることのできる、コンパクトに濃縮された一冊である。
形態論の研究史と現代の多様な形態理論を概観し、言語学における各形態論研究の位置を確認した後、英語と日本語で具体的トピックを解説する。英語では名詞化における、動名詞、事象的派生名詞、指示的派生名詞の機能的な区分と各種形態との間の対応づけを議論する。日本語では、屈折、派生、動詞活用、各品詞の複合語、並列表現、擬音語・擬態語について、問題点を整理する。さらに項構造、語彙概念構造、生成語彙論も扱う。
本書は、言語学の全分野に目を配った、小粒ながらもup-to-dateな知見を盛り込んだテキストであり、間違いなく、第一級の言語学入門書である。同時に、平明な英語で書かれ、例証される項目や例文も、ほとんどが英語から採られているという意味で、英語学概論の教科書としても格好のものとなっている。