四半世紀の歴史を振り返るサントラ全集の第1巻。第3作は老渡世人の悲哀が泣けたけど、今じゃ寅さん自身が御老体だもんなあ。初期の音楽を集めた本巻では、曲間に入る寅さんの啖呵も若い。つねに懐かしさを覚える音楽は日本の原風景。山本直純の功績も大きい。
“その二”は第11作『寅次郎忘れな草』から第21作『寅次郎わが道をゆく』までを収録。73年〜78年の作品で『男はつらいよ』が国民映画としての地位を不動のものとした時期だ。なんといっても『忘れな草』のリリー(浅丘ルリ子)が強烈な印象。最高のコンビだった。
78年の第22作『噂の寅次郎』から84年の第34作『寅次郎真実一路』まで、映画『男はつらいよ』のサウンドトラック・ヒストリー・シリーズの第3巻。主題歌の別ヴァージョン、劇中音楽、名台詞などで綴る“音で観る寅さん映画”。意外にいいんだよな、これが。
寅さんの高齢化が目につくようになった時期のものだけに、曲間に入る台詞も他人へのアドバイス(恋愛指南)が多い。ウィーン編の(26)は「常動曲」を巧みにアレンジして、山本純直の面目躍如。4枚目を締め括るおいちゃん(森川信)の名台詞は、もう、最高の一言だ。
第48作『紅の花』の音楽を中心に、リリーが登場した第11作『忘れな草』、第15作『相合い傘』、第25作『ハイビスカスの花』の未収録BGMと名場面で、寅次郎とリリーの出会いから軌跡をまとめた。結局、寅次郎のマドンナはやっぱりリリーだったなと再確認。
松竹マークの音楽、主題歌(渥美清・歌)からスタート。(14)はリリー(浅丘ルリ子)と寅が初めて出会い、言葉を交わす網走のシーンに流れた名曲と、映画で使用されたインストを収録。各シーンのスチール写真、解説付きで熱烈なファンも満足させる作品。
料理屋は劇場。「芝居の原作は季節。主人は座付き作家。料理長は演出家で、室礼は大道具。器が衣装で、盛り付けは化粧。料理が役者です」。日本料理と和の暮らし、そして歳時を楽しむための一冊。