「このウワキモノ!」ミス松高といわれる岬真奈美から、おれにたびたび電話がかかってくるので、妹のかなえは最初冷やかし半分だったのが、最近では、反感をあらわにしている。理由はわかっている。札幌のゆり子をどうする気なのだといいたいらしい。ところが、真奈美はおれに関心があるからではなく、親友の石橋のことをあれこれ聞きたいからおれに近づいたはずなのに、石橋も真奈美も…。
南北朝の動乱は畿内ばかりでなく東国をもまきこんだ。本書は関東における「太平記」の主舞台をつぶさに歩き、実感と推理を駆使して埋もれた武士の歴史を明らかにする。
中等野球の名門中京商業のエースとして、昭和12年夏に川上-吉原を擁する熊本工業に完勝して優勝、翌13年春には四試合すべてを完封するという快挙をなし遂げて優勝と、夏春連続優勝の偉業を達成した著者は、プロに入ってからも連日の力投によって“鉄腕”の名をほしいままにしたが、昭和17年には、前日登板しながらも、その翌日、名古屋を相手に28回を投げ抜くという超人的な活躍をした。戦後も13無四死球試合の日本記録を作るなど、日本野球史上に輝かしい足跡を残した著者が、半世紀の野球生活の中で出会った多くの野球人や勝負の思い出を、懐かしさを込めて綴っている。
ふだん何気なく暮らしているこの空間には、実は〈気〉が充満している。中国やインドで、数千年の昔から超能力の源として活用されてきた凄まじいエネルギーが眠っているのだ。本書は、具体的・実践的・劇的な例をふまえつつ、大気中に充満する潜在エネルギー=気を活用するノウハウを体系的にまとめあげたものである。
香奈は高校入学以来ずっと憧れていた彰一とコンサートに行き、帰りには家まで送ってもらう。ところが、家のそばの児童公園まで来ると、なんと、そこが果樹園に変わってる。中へ入ると、作業服姿の大勢の猫達が忙しそうに働いている。そこは『想い出の果樹園』、ふたりも『想い出の種』を蒔いた。どんな実がなるのだろう…。タイトル作品の他、いずれもファンタスティックな3編を収録。
ブハーリンとの出会い、楽しかりし日々、そして政治裁判の嵐。ブハーリン逮捕の直後、若き著者も捕えられ、1937年からフルシチョーフ改革の56年まで、収容所や流刑地で服役する。本書は、絶望の時代を生き抜いた誇り高き一女性の回想録である。党・国家の指導者が多数登場し、政治裁判にいたる30年代の政治のありよう、多くの指導者がなぜスターリンに屈服していったのか、を生き生きと伝える。
この本は、ミスターシービーとの運命的な出会いから競馬を愛するようになった、一人のうら若き?乙女の恋愛日記である。
「私は地獄から戻ってきた、束の間の地獄からだ。しかし、私が確実にそこに落ちるのは疑いない」-反対派の問題を審議する党中央委員総会は、相互の中傷・告発の場でしかなかった。政治裁判の開始から逮捕されるまでのブハーリンの苦悩と、多くの中央委員たちが何故スターリンに屈服していったのか、を伝えるスターリン時代の貴重な証言。
幼い日の祖父の家の記憶。父、父の友人の恩師たち。若い日の先輩、友人たち。そして“わが青春”。洋の東西、関東と関西の偉大なる知の架橋・桑原武夫。“専門”を超えて“知”のリベラルな統合を志向した、著者の、自由にして柔軟な思考を示す“精神の遍歴”。