「この髪を、けっして解いてはいけないよ」翠は亡き曾祖母の言葉を守り、自分につきまとう得体の知れない力を抑え込んでいた。一方、式を使って霊的な力をコントロールする、式神使いの神戸天明がいた。翠が感じる強い違和感は、相反する力がせめぎ合い、何か蠢きだしたからなのか?そして、ある行方不明事件の謎を追う翠は、自らの途轍もない過去と対峙することに!鎌倉を舞台に「人」と「獣」の壮絶な物語開幕。
鎌倉時代末期。長い間幕府を支配してきた北条一族の娘・姫夜叉と、一族の頂点に立つことが約束されている高時は幼い頃から将来を誓いあっていた。しかし、同族同士の結婚は許されない。周囲が決めた高時の婚礼が三日後に迫った夜、ふたりは駆け落ちを決行したのだが…。姫夜叉の裡に潜む誰かの思惑が時代を動かしてゆく。妖しくも美しい天女が織りなす、ミステリアス伝奇ロマン。
荒ぶる漆黒の獣は、果たして人間の味方なのか、それとも敵なのかー夢から甦った獣・銀流を制御しきれぬ翠は、懊悩し続ける。その惑いにつけ込み、獣を我がものにしようと動きだす、黒衣の式神使い、神戸天明。今、太古の闇深淵から涌き上がる、新たな化生の気配を孕んで、鎌倉を騒ぐ!そして、赤瀬が誘われた切通しの森に散乱するぬめりを帯びた白骨が意味するものは何?少女と獣とに襲いかかる、過去の謎とは。
見応えのある美術館として、展示、運営等内外にその存在感を示し、現在も精彩を放つ個性ある活動ぶりは全国美術ファンの注目の的。創立から現在までの「鎌倉近美」50年の奮闘の跡を辿る。
亡き両親の故郷である川越に出立することになった豊島屋の看板娘しほ。彼女が乗る船まで見送りに向かった政次、亮吉、彦四郎の三人だったが、その船上には彦四郎を目にして驚きの色を見せる老人の姿があった。やがて彦四郎は謎の刺客集団に襲われることになるのだが…。金座裏の宗五郎親分やその手先たちとともに、彦四郎が自ら事件の探索に乗り出す!鎌倉河岸捕物控シリーズ第四弾。
“姫”と“義高”-七歳の少女と十二歳の少年のふたりは、こどもの姿のまま、古都・鎌倉の町で長い長い時のなかを漂ってきた幽霊だ。そんな姫の前に、ある日紫陽花の模様の土鈴を返してほしいと言う女の子・江見里が現れて…。複雑な事情を持つ幼いふたりの亡霊が、悩みを抱えて鎌倉を訪れた人々に、不可思議な体験を見せていく…。せつなくて、ちょっと怖い鎌倉幻想物語。
鎌倉の文士・芸術家たちが活躍した現場の示唆に富む貴重な思い出。
城なき城下町高岡、“幸福の風”吹く犬山…大人の歴史旅は、表通りよりわき道が面白い。
“銀のなえし”-ある事件の解決と、政次の金座裏との養子縁組を祝って贈られた捕物用の武器だ。宗五郎の金流しの十手とともに江戸の新名物となる、と周囲が騒ぐのをよそに冷静に自分の行く先を見つめる政次。そう、町にはびこる悪はあとを絶つことはないのだ。亮吉・常丸、そして船頭の彦四郎らとともに、ここかしこに頻発する犯罪を今日も追い続ける政次たちの活躍を描く大好評シリーズ第八弾。
カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュのマスターによる、店のこと、人、もの、音楽との出会いの話。
破天荒な頑固親父の突然の入院をきっかけに、絶縁状態の家族が1人、また1人と戻ってきて…。家族で食卓を囲むうちに、再生されていく家族の絆ー。『ALWAYS 三丁目の夕日』『キサラギ』の脚本家・古沢良太が自ら書き下ろしたホームドラマ『おいしいごはん』の小説版。
念仏聖・法然、愚禿・親鸞、只管打坐・道元、戦闘者・日蓮。彼らは中世の精神世界に一大画期をもたらした実践的な思想家たち。その巨大な影響力の行方は。
弘安三年(一二八〇)十一月、ひとりの貴族が馬に乗り、わずかな随伴者とともに東海道を京から鎌倉へと向かっていたー。中世の旅路は潮の干満など自然条件に大きく左右され、また、木曾三川の流路や遠州平野に広がる湖沼など東海道沿道の景色も、現在とはかなり異なっていた。本書は鎌倉時代の紀行文を題材に、最新の発掘調査の成果などを取り入れ、中世の旅人の眼に映った風景やそこに住む人々の営みを具体的に再現するものである。