日本の文壇が近代を迎えるにはいかなる土壌があったのか、文人たちの伝記と逸話を中心に探る。取り上げた文人たちも、著名歌人蓮月尼から、赤報隊として切られた川喜多真彦、京都奉行所与力・同心、富士谷成章門流など従来全く研究されていない人たちまで多種多様。
幕末明治に活躍した文人たちの伝記や著述を取りあげ当時の文化のかたちをあらわにする。全部で14章からなり、現代の古典研究の学祖の一人本居宣長の京の門人たちの動向や、高槻における万葉調歌風の一派、山陵研究に従事した愛書家の矢盛教愛、尼崎の郷校の先生として一生を終えた鴨田白翁、懐徳堂の人々と山片家の交流、堺の富豪の蔵書目録などなどみな興味尽きぬものばかりである。
古代から近代まで、豊富な史料をもとに、その時代時代を生きた人々の息づかいを伝える。川との関わりから生まれた地名の由来に始まり、河内音頭発祥の地、八尾常光寺の地蔵の胎内墨書の解読や、代々医師を勤めた田中家の文書より近世の医療事情を初めて紹介するなど、新しい知見に溢れる。
小西来山は西鶴や芭蕉などと同時代に生きた大阪の俳人。酒を愛し、人形を愛し、そして何よりも俳句を愛した。その来山の世界を、大阪において「来山を読む会」を結んだ坪内稔典とその友人たちが読み解く。来山の百句を鑑賞した「来山の百句」、主要な俳文に注をつけた「来山の俳文」、来山にかかわるエッセーなどを収録。
昭和31年(1956年)…関西エリア民放テレビがただ一局誕生した!そして、たった2年半で、その名が消えた。空白の歴史に生きたOTV大阪テレビ放送とは?すべてナマ放送、モノクロで、セットはグレイ一色!どんなヤツが、どんな番組を?未知に向って青春を燃やした“テレビ野郎”たち。50年を経て、いま語られる汗と笑いの物語。
京大坂が上方とよばれ学芸学問の中心地だった頃、そこに生きた文人たちを、伝記と著述を中心に様々な逸話を織りまぜながら紹介、多く資料や自筆短冊の写真を添えた。取りあげる人物・事項も住吉大社神官の津守家、緒方洪庵と和歌、一絃琴(須磨琴)の真鍋豊平、伴林光平と種痘の和歌、尼崎の儒医西村榕園と懐徳堂、京都奉行所同心吉岡美知などなど、幕末という時代に文芸や学芸をもって華やかに生きた様を浮き彫りにする。
漫才、落語、喜劇、浪曲、講談、諸芸、メディア、作家・裏方、劇場・寄席ー。上方演芸の総覧としてその歴史と魅力を集大成。笑いの芸、その源流から現在まで、そして未来をも展望する。
太平の世となった江戸時代に、「一生に一度はお伊勢さま」と言われるほど大流行したお伊勢参りを題材にした大河落語。大坂から見て伊勢は東にあるため、通称『東の旅』としても知られる。喜六と清八というウマの合う二人の若者が大坂から奈良を通り伊勢神宮に参拝し、鈴鹿峠を越えて近江・京都をまわり大坂へ戻るまでの道中を描く。『伊勢参宮神賑』は旅の道すがらで起こるそれぞれが独立した噺の総称で、全編を通して口演されることは約百年以上なかった。時代を追うごとに演じられなくなり消滅してしまった噺もあるため、全体の三分の二ほどしか残っておらず、伊勢参りネタにもかかわらず伊勢神宮に参拝する場面が欠落していた。それを落語に関する資料・文献の収集家としても知られる著者が綿密なリサーチのうえ復元し、一部創作を加えて全二十二席によみがえらせた。