真実の愛を求めるがゆえに、孤独な迷路をさまよう青年のやさしさと苦悩を描いた、未完の長編ラヴ・ストーリー。
祖国ルーマニアを去り、パリに移り住んで三年。のちに、フランス語による呪詛と冷笑の著作で「暗黒のエッセイスト」の名を馳せることになるシオランの、これは母国語で書いた最後の一冊である。「熱狂的なリリシズム」にとらわれていたという当時の彼ならではの、屈折した詩的文体の妙味を存分に味わえる。
99機撃墜のスコアを持つもとドイツ空軍パイロットが自らの体験をもとに克明に描いた、ドイツ空軍のロケット戦闘機「コメート彗星」の開発そして戦記。
架空都市ユマジュニートに襲いかかる破壊の王・虹竜仮象の地平を超えて守り抜こうとする美貌の少年少女たち。それは-夢と呪文に幻作された超絶技巧の物語。
その朝教室に入っていったわたしは、数学教師エヴァンズの他殺死体を発見した。格別つきあいのなかった彼がなぜこの早朝わたしの教室で殺されていたのか。まもなく、かつての教え子だったエヴァンズの息子が、時を同じくして姿を消していたことを知らされ、わたしは事件の深みに踏み入ることに…。シカゴ郊外のハイスクールを舞台に、ゲイの英語教師が見た現代の悲劇とは。
ある夜、ユーザの姿が消えた。行方を捜すユリエとカイは、ユーザをさらったのが、伯爵家の美しい姉妹であることを知る。姉のフラナーゼは、領主であった夫を亡くしている若き未亡人。妹のルシーラが、姉に代わって館を動かしている。だが、姉妹が住む館については、数年前からよからぬ噂が流れていた。しばしば左右の瞳の色が異なる人間が連れこまれ、誰も戻って来た者はいないという…。
栗村夏樹は都内の短大生で剣道三段の腕前。自宅近くの警察署の捜査一係・牧田刑事から電話がかかり、夏樹の友人・桂木亜沙美が誘拐され、身代金一億円を要求する脅迫状が、ファックスで届いたという…。’94年『化身』で第五回鮎川哲也賞を受賞したトリック・メーカーの著者が構想二年、満を持して放つトリック&ドンデン返し。「海に沈む夕陽、“殺人者”が若い女性を断崖絶壁に追いつめ、最後の電話をかけさせる」-プロローグに込められた三つの謎とは。読者はこの仕掛けをどこで見破るか。書下ろし本格推理傑作。
本書は、事故の全経緯を豊富な取材に基づいて検証し、事故の原因をはじめ、常に軍事利用を伴って進められた増殖炉開発の歴史、推進勢力の奢りと腐敗、そのハイテクノロジー偏重体質のもたらした基礎技術の軽視、浪費を前提にしたエネルギー政策、などの問題点を多角的に論じながら、脱プルトニウム社会への方向性を提起する。
ジェイとリューイ一行は、カディア皇国の船に乗って、オディロカナへ向かっていた。ところが突然の凪にあい、三日間も同じ海域にとどまることに…。そんな夜、鏡のような海面を白い影が歩いてきた。それはシレニアーナー海をさまよう舟幽霊だった。白い少女の姿をしたシレニアーナは、眠っているリューイの部屋に忍び込み、リューイの唇にふれる。剣を手に立ち尽くすジェイだが…。
韓半島から伽耶国の王子伊可留が邪馬台国へ漂流してきた。すでに女王卑弥呼は諸国を治める霊力さえ翳っていた。伊可留はさらに大和へと向かう。そこは辰砂(朱)を産する地。これを掌握する者が覇者になれるほど貴重なものだった。次なる権力を求めて雄略天皇が、さらに継体天皇が大和・飛鳥の地へ!卑弥呼の時代から聖徳太子の青春期までを描く大河歴史小説。