兄の変死で帰郷した医学生翔二は、事故の捜査が打ち切られ、なぜか両親までが口を閉ざすことに激しい憤りを覚えた。元予備校講師占部の協力で真相を追い始めるが、兄の幼馴染たちは異常な怯えを示すのだった…。兄を悩ませた、“ね、遊んでよ”という怪電話の意味は?事件の追及は、やがて翔二の記憶に秘められた、15年前の恐ろしい出来事を呼び覚ました。’92年推理作家協会賞に輝く、若き本格推理の旗手が愛着を込めて贈る“囁き”シリーズ、読者熱望の第3弾。
冷戦体制崩壊後、今日の資本主義は新たな展開を迫られている。地球を覆う環境破壊・膨張する人口・西西問題…。各民族のもつ文化的多様性をベースに協調・共生は可能か。価値観の転換・知的枠組の再構築を考える。
「経済の論理」と「政治の都合」に揺れる“最後の巨人”。行方定まらぬ大欧州のコンパスを読む、迫真のドキュメント。
聴く者を見知らぬ光景へと誘ってやまないシューマンの音楽-。狂気の影に深く覆われた最晩年の日々を緊迫感あふれるタッチで描き出し、ピアノ曲を中心にその音楽の秘密にせまる。フランス精神分析学者による感動的なシューマン論。
潜水艦なだしお事件やカンボジアのPKOに不気味に露出してきた戦争、健康のための登山で急死する企業戦士たち、自由化の波と後継者難にあえぐ農業と環境破壊の実態…。人びとのつぶやきに耳を傾けて現代日本の自画像を描き続けるルポライターが列島縦断して探った黄昏の時代の厳しくも滑稽な記録群。
真実の愛を求めるがゆえに、孤独な迷路をさまよう青年のやさしさと苦悩を描いた、未完の長編ラヴ・ストーリー。
本書はマカオの礎をつくりあげた歴史を概観し、そしてその都市と芸術の発展を20世紀初めまで辿るものである。
祖国ルーマニアを去り、パリに移り住んで三年。のちに、フランス語による呪詛と冷笑の著作で「暗黒のエッセイスト」の名を馳せることになるシオランの、これは母国語で書いた最後の一冊である。「熱狂的なリリシズム」にとらわれていたという当時の彼ならではの、屈折した詩的文体の妙味を存分に味わえる。
「ぼく、闇の森に行ってきたいんだけど…」ためらいがちに話す、ヨシュアの一言が始まりだった。闇の森は、ヨシュアの両親がなくなった地、そこを訪ねたいと言う。反対するカレンとゼオを尻目に、ライラはヨシュアを連れ旅に出発してしまう。だが、そんな二人を密かに見つめる瞳があった。そして、闇の森に到着したのを待ちかまえるかのように、ライラとヨシュアに襲いかかる。ヨシュアを奪われ、深手を負ったライラは、謎の麗人シャルバートの助けを借り、謎の女、アサギを追うが…。
99機撃墜のスコアを持つもとドイツ空軍パイロットが自らの体験をもとに克明に描いた、ドイツ空軍のロケット戦闘機「コメート彗星」の開発そして戦記。
幻影の女性をもとめ、科学読み物のライターが陥った孤独という穴。消えた自分への戦慄。ファンタジー文学の鬼才が、あえて自らの生を刻印した驚愕の虚構。
三毛猫ホームズら、お馴染みの面々がパーティに招待された。由緒あるリゾートホテルの閉館記念パーティである。このホテルでは、十年前、オーナー・金倉の一人娘がピアノを演奏中に殺されるという惨劇があり、今なお未解決だった。そして、金倉は「今回は私が殺される」と予言した。はたして、十年前と同じピアノ曲が流れ…。国民的大人気シリーズ、第十九弾。
フルトヴェングラーの指揮棒。世界支配の象徴=聖槍。二つが出会ったとき明かされるナチスの秘宝とは。音楽ミステリー四部作完結篇。
なにげない日常生活の中で知らぬまに忍び寄る黒い影。それは〈恐怖〉というものにかわり、人々の心に巣喰っていく…。人生の終着駅にみた恐怖を描く表題作のほか、七編。著者自ら、選びぬいた最高級のホラー短編集。