“大丈夫。一緒にいてあげるよ”クルーエルさんの言葉は、本当だった。一緒にいて僕を孤独から、危険なことから守ってくれた。僕はただ、与えられた優しさを受け取るだけ。だから今、彼女が僕の助けを必要としてくれるなら。全力で応えるために、夜色の詠を詠う。不完全でも、不恰好でも、これは僕が彼女のために紡ぐ詠ー。想いを世界に反映できる召喚術・名詠式。その専修学校トレミア・アカデミーに、人を石化する灰色名詠の使い手が侵入した。目的不明のまま、自らを「名も無き敗者」と称する使い手は、校内の人々を次々と石化していく。そして、ついにクルーエルとネイトたちにも「敗者」の手が伸びるのだがー!?大切なもののため、少年は立ち上がる。召喚ファンタジー第3弾。
「ネイト、君は名詠式のもうひとつの素顔を知った時、それを受け入れる?それとも対峙する?-君の旋律が楽しみだ」凱旋都市エンジュの一隅で、そう呟きシャオは微笑む。“イ短調”のサリナルヴァからある依頼を受け、エンジュで開かれる新種触媒の披露会に出席することになったネイトたち。しかし、そこには空白名詠の使い手・シャオが待っていた。シャオは告げる。今この時、ネイトとクルーエルがエンジュに集うことが鍵となり、“ただそこに佇立する者”への扉は開かれるのだ、と。鍵とは、扉とは、何のことなのか?全てが謎に包まれたまま、問題の披露会が始まろうとしていたー。詠う召喚ファンタジー、世界が意味を変える新章突入。
『アマリリスの記憶に耳を傾けろ、お前の全てがここにある』アーマの言葉から広がる映像に、クルーエルは言葉を失った。「わたしが…わたしでなくなる…?」新種触媒暴走事件に端を発し、“世界”の真実は明かされていく。二つの意志法則体と、名詠式の成り立ち。そして、そこに必要不可欠な“クルーエル”の存在意義ー。全てを知り、クルーエルは決断する。「信じてる。だから、伝えたいことがあるのーネイトに」彼女の願いは、ネイトに届くのか?名詠式が残酷な“真実”をつきつける、詠う召喚ファンタジー。
「クルーエルがいなくなった時、あなたは一人で何ができる?」夜の競闘宮でシャオから問いかけられ、ネイトは立ちつくす。凱旋都市エンジュの永い夜は続いていた。“名詠式が存在する理想の世界”を目指し、繰り返されるミクヴァ鱗片を巡る戦い。鱗片の行方によって“残酷な純粋知性”-クルーエルの運命が、決まる。彼女が、世界から消えてしまうかもしれないーその事実を突きつけられ、ネイトは自分の中の想いを自覚する。「何にかえても、クルーエルさんを守る。だって彼女は僕のー」大切な人を見つけて、少年は決意を抱く。“君のもとへ続く詠。それを探す”召喚ファンタジー、物語はついに“世界”の核心へ。
作者が文章的に仕掛けた、読者の認識の錯誤を利用し、読後の衝撃を大きくする、“叙述トリック”というテクニック。アガサ・クリスティー『アクロイド殺し』を筆頭に、探偵小説において何度となく使われてきたこのテクニックに焦点をあて、探偵小説における叙述トリックの必然性を描きだす。「本格ミステリ評論」を題材に行なった巽昌章、法月綸太郎との公開鼎談も収録した、十年にわたって雑誌連載し、三十回分ずつ単行本化されてきた評論の掉尾を飾る一冊。
3年前に突如失踪した義兄シンを探すミシェルは、猟奇事件が頻発する地方都市に向かう。そこで人間を襲う鱗に覆われた化け物と、これを狩る黒ずくめの男ー楽しげに化け物の身体に刀を突き立てるシンの姿を目撃した。跡を追ったミシェルは、太古から続く邪神と人間の戦いの歴史、そして殺戮兵器として生み出されたシンの呪われた運命を知らされて?榊一郎C・NOVELS初登場。
“時と永遠の相の下”に「コーヘレトの言葉」(伝道の書)を読み解き、生きてきた自身の100年を「戦争と平和」という主題から回顧し、人生の黄昏時にヘルマン・ヘッセの詩の一節を、イエスの語られた“永遠の生命に至らせる生きた水”を想うー。たゆみなき学究の思いによって綴られた百歳の言行録。
ソ連との緊張緩和の機運は政権内のタカ派により圧殺された。ソ連崩壊後単独の覇権を握ったアメリカは世界の警察のごとく振舞い始めるが、史上最低と呼ばれる大統領のもと、国内経済の瓦解が始まった。しかし9・11テロの打撃を口実に軍事費は増大し続ける。国民は改革の兆しを初の黒人大統領、オバマに託すが、希望はすぐに失望に変わった…頽廃が忍び寄る「帝国」の病理を容赦なく描き出す歴史超大作完結篇。
正面の敵、ナチス。ナチズム・ファシズムはいかにして批判可能なのか?「もはや意識されていないもの」と「まだ意識されていないもの」をキーワードに、ヒトラー政権下の日常を同時代の現場から批判し、瞞着者たちの暴力と野蛮をあばきだした稀有な“思想的実践”。名著『この時代の遺産』に続くブロッホの1930年代論集、本邦初訳。
「玉座に座った最初の近代人」と呼ばれる神聖ローマ帝国皇帝フリードリッヒ二世の巧みな外交により、イェルサレムではキリスト教徒とイスラム教徒が共存することに。しかしその平和は長続きせず、現代では「聖人」と崇められるフランス王ルイ九世が率いた二度の遠征は惨憺たる結末を迎え…。「神が望んだ戦争」の真の勝者は誰なのかー。『十字軍物語3』を文庫第三巻、第四巻として分冊。
9・11後の帝国の衰退は歴史的な必然だったのか。現代史を牽引した大国の正体を明かす超大作完結。
一八世紀後半から二〇世紀前半にいたる西洋音楽史は、芸術音楽と娯楽音楽の分裂のプロセスであった。この時期の音楽が一般に「クラシック音楽」と呼ばれている。本書は、「クラシック音楽」の歴史と、その前史である中世、ルネサンス、バロックで何が用意されたのか、そして、「クラシック後」には何がどう変質したのかを大胆に位置づける試みである。音楽史という大河を一望のもとに眺めわたす。