@kodakana_ship10
ラジオのことを語る

総務省の「民間ラジオ放送事業者のAM放送のFM放送への転換等に関する「実証実験」の考え方(案)についての意見募集」に対して個人として意見を提出しました。「転換等」と並行してデジタル化を進めてほしいという内容です。以下に全文を掲載します。

要約

  • 一受信者の立場から、中波 AM 局の FM への転換等と並行して、デジタル放送の導入が進められることを希望します。
  • デジタル化への筋道が示されないまま AM 放送の停止が行われることで、ラジオが衰退しているという印象を強める結果になることを危惧します。
  • デジタルラジオ放送の規格としては、DRM 方式が最適であると考えます。

本文

私はラジオを愛好する一個人です。今般の所謂「転換等」の計画について、広く一般の意見を募集されるとのことなので、一人の受信者としての立場からの見方を提出したいと思います。

かかる「転換等」の計画が立てられることの背景には、近年推進された通称「ワイド FM」の広がりがあると思います。ワイド FM の周知に当たっては、FM は AM より雑音が入りにくいといった点が強調されているのを見ます。

しかし、実際にラジオ放送を受信していて、FM が雑音に強いという実感は全くありません。AM であれ FM であれ、便利なものが増えるほど受信環境は悪化しています。電子機器等が放射する雑音の周波数が、中波にかかれば中波 AM 放送が、VHF に被れば FM が影響を受けるだけです。また、たとえ雑音源がなくても、電波状況によって入る雑音は避けられません。

このようなアナログ放送では、いくら音が良いと言っても、デジタル音に慣れた層には親しまれにくく、「転換等」は放送局にとって消極的な避難策にしかならないと考えます。また、デジタル化への展望が開けない状態での「転換等」の推進によって、一層ラジオ産業が衰退しているという印象を宣伝する結果になることや、本命であるべきデジタル化のための体力が失われることを深く危惧します。

雑音耐性を根本的に改善し、放送局の将来への明るい見通しを与えるには、やはりデジタル化をするより他に方法はないものと考えます。

周知のように、現在、世界的にはラジオのデジタル化が進んでおり、その普及を前提としてこそ、AM 放送の停止が進められてもいます。このため、わが国に於いてデジタルラジオを再度立ち上げるには、海外である程度推進された規格を導入することが合理的かつ有利であり、その中では Digital Radio Mondiale(DRM)方式が好適であると考えます。

その理由としては、次の三点が挙げられます。

1)欧州 DAB 系方式と違い、新たに帯域を確保する必要がない。
2)米国 IBOC 方式と違い、特定の米企業に権利料を支払う必要がない。
3)日本 ISDB 系方式と異なり、送信や受信に要する装置の製品化がすでに始まり、国際的な普及が見込まれる。

DRM 方式のデジタル放送は、次の三点から導入を始めることができると考えます。

1)中波帯では「転換等」によって空く周波数。
2)V-Low の空き地となっている 95 から 108MHz の間。
3)短波帯では NHK とラジオNIKKEIが持っている周波数。

ラジオのデジタル化が進めば、インターネットのストリーミング等に対する競争力が高まり、若年層に浸透する可能性が広がり、送信所の維持更新にかかる費用を圧縮でき、放送局が新たな資本を獲得する機会を増やすこともできるものと考えます。

今デジタル化でこれ以上の遅れを取れば、ラジオ放送に致命的な影響があろうことを憂慮します。「転換等」の計画が立てられる機会に、並行してデジタル化が再び推進されることを望みます。御賢慮があるものと期待します。

意見を終わります。