id:quadratus
小説の始まり方のことを語る

ある朝早く、スナフキンは、ムーミン谷のテントの中で、目がさめました。あたりは、ひっそりしずまりかえっていました。しんみりとした秋のけはいがします。旅に出たいなあ。
ほんとにふいに、どこもここも、しんみりとしてきたのです。あたりのようすは、もう、なにもかも、いままでとは、がらっとかわっていました。旅に出ようと思いたった人には、いっときいっときが、身のちぢむ思いでした。
(トーベ・ヤンソン『ムーミン谷の十一月』)