仰ぎ見る斎場に立つ煙突を出でゆくあなたの四十年に
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短歌のことを語る
短歌のことを語る
運ばれた春の息吹を胸にあつめバルーンにして届けられたら
短歌のことを語る
桜舞う 掲げし板を 仰ぎ見る
こぼれし笑みは 桜に染まる
短歌のことを語る
風運ぶ 梅の花弁の ひとひらを
同じ運ぶは 春の息吹か
短歌のことを語る
痩せ猫のとんがり山背に降る雪もなかばで消え失す春近し
短歌のことを語る
器用なら言葉はいらずに伝えしものを
不器用ゆえに言葉にならず
短歌のことを語る
陽を浴びて雪は溶けども溶けきらぬ
募るおもいに惑いし紅顔
短歌のことを語る
濡れてなお打たれるために頬かざす迷いは紅の色と流れよ
短歌のことを語る
出るまでに まよいまよいし 服のいろ
こころ満ちたり 雨は降れども
短歌のことを語る
ビル街の闇より黒く沈みたる猫のまなこに問われたり愛
短歌のことを語る
老猫やたれにも訪なふ春なれば古バケツにも花はあふるる
(老猫:ふるねこと読みます)
短歌のことを語る
結論はあかさたなでは言えなくてさんまの骨と袋に詰める
短歌のことを語る
鯛の背に紅さし来たればきみを想う空の上でもよく釣れますか
短歌のことを語る
飽き飽きて遠き山見る鳥を見るあなたの指におびき出される
短歌のことを語る
にゃあと鳴き そうっと擦り寄る 鼻先に
すうっと差し出す 指は餌でなく
短歌のことを語る
風運ぶ 桃の香りに 振り向けば
遠く聞こえる 囃子の音色
短歌のことを語る
寒月は何処に往かむかるがるとひと夜で梢を走り抜けたり
短歌のことを語る
波弾け 岩に染みゆく 潮の香は
揺らめく風の 気ままなままに
短歌のことを語る
手を伸ばす梢に寒の戻りたる戻らぬ人の春をぞおもふ
短歌のことを語る
咲き乱れ 風にたゆたう 山桜
散りゆく様も 潔きかな