/短歌

排ガスをあつめた空やさがり来て国道脇のラベンダーは青

空見上げ　思いを馳せる　幼子の
瞳に映る　星の五月雨

天頂をめざすふたりの息を聞く長針とともに滑り落ちたり

君の名で横断歩道の白鍵をたたきつ渡る四車線かな

本当は気付いているのよ無いものに二十年目のわたしとあなた

たぷりと冷凍だけどメシもあるいけない理由だけがないぞ～ぅ

鳩ぽっぽ優しいだけじゃないなんてたまには鞘を抜いて見せろよ

夕飯がカレーじゃどうしていけないの理由を羅列してみる六時

にびいろの雨がキリンをゾウさんを掃射し去った跡に佇む

瀬戸物の金魚よ泡を吐いてみよ誰の為にぞ水に抱かれる

土緩む田んぼの案山子つかまえて正論なんかと駄々をこねたい

その船の越えた波の色と数想っているよ届いているよ

本当の価値など我は知りたくもなし水晶胸にころがす朝かな

肉じゃがは冷めてからが美味しいのそれでいじゃないそんなもんじゃない

電動に負けて歩きし坂道や負けず嫌いは花愛づふりして

止まぬ雨わが足止めし一群の花は瑠璃蝶はねをふるわせ

君送る花の万鐘鳴り響けつよくつよくユニゾンで響け

沈みゆく　月が朝日に　かき消され
替わりに浮かぶ　あなたの笑顔

誘いなく訪なうものもなき春に花の筵で待つ猫の居り

潮風は神戸の坂を駈けのぼるわたしの背中を追い越してゆく