からんころん
味噌汁バー ねこまんまは無人だった
カウンターには重厚なカットグラスが二つ
スコッチが一瓶
パナマ産の葉巻が一箱
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連続はてな小説のことを語る
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冷凍による深い眠りから目覚めかけたイカ大王は、その身にとろりとまとわりつく液体の感触にえも言われぬ心地がした。
「なんだ?この芳しい液体は?」
オリーブオイルだった。
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イカ大王は夢を見ていた
すべらかな猫足バスに、うっとりと身を沈める
煙るような泡の向こうには、浴槽の縁に腰掛けるイカ女王の姿が見える
イカ女王は両手で湯をすくうと、イカ大王の外套に回しかけていた
(ああ、いけない、いけない。そんなに慌てると旨味成分が流れ出てしまうよ…。)
「え?この、でっかい冷凍イカ、お好み焼きにいれるの?生解凍で刺身じゃなくて?」
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急速冷凍されたイカ大王はフレッシュなまま眠っていた。声の主はゆっくりと近づいて手袋をとり、冷凍イカ大王に触れた。かっちかちだった。瞬時に指先が冷えた。痛い。その人物は眉間にしわを寄せ、携帯電話を震える指で捜査し、一度のコールで繋がった相手に向かって言った。
「でっかい冷凍イカ落ちてるけど、どうする? お好み焼きに入れる?」
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一方、BGMはターミネーターとはいえ徒歩移動のイカ大王は、もはや物語に追いつく術はなく、幼稚園児の群にアピールすれども、幼稚園児は孵化したカブトガニと平家蟹の水槽を手に、海へ一目散
折しも西日本は40年ぶりの大寒波に襲われており、心が折れるばかりでありました
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その頃、
「もしかして知り合いかも?」
と表示された三郎のアカウントをフォローし、「島メシなう」にいいね?する母であった。
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車のドアを開けられると躊躇なく乗ってしまう、それが三郎だった。またやってしまった……と思いながら三郎は何くわぬ顔でスマホを操り「島メシなう」と全世界に向けてつぶやいた。
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というわけで、三兄弟の現在位置は
長男ティモシー、スイス上空
次男二郎、亭藻海 広島流川店
三男三郎、小豆島
母の行方は知れない
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そのころ、スイスの山荘でパンケーキを焼いているティモシーのスマートフォンが「でれっでれー、でれれー、でれれれーん、でれれーん」と、鳴り響いた。画面に表示されたMの文字にティモシーは少し眉をひそめるが、迷わず通話のボタンを押す。
「やぁ、M。どうしたんだい?私はもう引退した身だが」
「やぁ、Mr.ダルトン。あなたの力は借りないつもりだったのだけれど、緊急事態だ。君の弟たちに危険が迫っている。すまないが、日本へ向かってほしい」
すると、轟音とともにヘリコプターが山荘の窓に横付けされ、くるりと軌道を変える。
「なんの音?」
彼シャツを羽織ったスイートハニィに軽く口付け
「パンケーキよりもお好み焼きがいいような気がしてきたんだ、ちょっと日本へ行って、お好み焼きの材料を買ってくるよ」
と言って、ティモシーは颯爽とスイスの山荘を出て行ったのだが、それはまだここでは重要ではないかもしれない。
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日生港から小豆島行きのフェリーに乗り込む三郎
しかし、小豆島で三郎を迎えてくれたのはオリーブオイルではなく醤油の香ばしい香りだった
たたずむ三郎に耳にどこからか声が聞こえてくる
「兄さん、醤油ソフトクリームはもう試したかい?」
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お好み焼き オリーブオイル
三郎が検索すると、出てくるのはクックパッドのレシピばかり。
しかし、その中に「へんくつや」という店を発見する。ここだと三郎は思うが、地図を開くとそこは広島県。大阪からは程遠い。困り果てていると、そこへアストンマーチンが止まり窓が開き、スーパーハンサムが声をかける。
「早く乗れ!広島へ行くぞ!」
三郎は思わず乗り込んでしまう。
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三郎は迷っていた。
目当てのお好み焼き屋の名前を忘れてしまったのだ。強烈なオリーブオイルの匂いを発しながら進む、不思議な盆踊りの集団とすれ違う。
そうだ!!オリーブオイルをかける店だった!!
三郎は「お好み焼き オリーブオイル」で検索をかけてみることにした。
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効果的なオリーブオイルの飲み方…それは、お好み焼きの仕上げにタラタラと回しかけるというものであった。
その方法を実践しているお好み焼き店こそ、三郎が向かっている空掘商店街の店。
げるみちからその店についての情報を得た二郎は、一路大阪へ向かう。
そこで三郎と二郎が鉢合わせすることになるのか…。
以下次号。
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スイスの山荘ではティモシーがスィートハニーのためにティム特製パンケーキを焼き、オレンジを絞っていたが、それもさておき
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一方、二郎はげるみちから効果的なオリーブオイルの飲み方を教わっていた。
効果的?
それはさておき
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その頃、三郎は「真田丸」で盛り上がる大阪の街を空堀商店街に向かって歩いていた
お好み焼きが食べたいのである
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二郎は「そういえば水木しげる先生もオリーブオイルを召し上がっていたな」と、急に寂しくなった。
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こんな化物のような姿の自分に、何故なんの躊躇もなく店を手伝わせようとするのだろう?
三郎は不審に思いながらも、まず手を洗おうと洗面台に向かい、鏡に映った自分を見た。
「あ!顔が!姿が元に戻っている!」
思わず上げた声も、元通りだ。
人間の姿であるのなら何を憚る必要もない。今すぐ、ここから逃げ出そう。
三郎がそっと裏口から立ち去ったのと入れ替わりに、互いにそれとは知らぬままの生き別れの双子の兄がお手洗いを出て厨房へ入っていった。
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三郎は畳の上で簡素なテーブルと古い座布団が並ぶ雑然とした部屋で目を覚ました。
「おい、いつまで休んでんだよ!!」突然の怒鳴り声と共に松葉がにが現れる。
「………………!!」驚く三郎に気付かない松葉がに。
「海老のアヒージョ3つ!注文入ってんぞ!!ニンニクがもうそろそろ足りねーよ!!」
三郎は帝藻海名物メニュー「海老のアヒージョ」を作りに厨房へ急ぐのであった。
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イヤな音だ。以前にも聞いたことがある。あれは、何の時だったか。そうだ、兄と喧嘩をした時だ。双子のあいつではない。長男のあいつだ。俺は三郎。双子は二郎。そう、長男の……。あいつは、どこにいるんだろう?涙が出てきた。しかし俺は今、上手に泣けているのだろうか?