/あなたを呪うプチ不幸

乗り物の中や信号待ちで居合わせた知らない人が、自分の知っている曲を微妙に間違った歌詞で口ずさんでいて
「あああそうじゃねえ！」と間違いを指摘したくてもできずに悶々としますように。

黒くて速い頭文字Gに向けて噴射した殺虫スプレーが「ぱすぅ」と情けない音を立てたきり沈黙しますように。

フライビーンズの皮が歯の間に刺さってモギャーとなりますように。

Googleマップスのストリートビューが、ちょうど見たいポイントだけ未撮影／削除済みになっていますように。

ふと口ずさんだ歌がどうしても途中までしか思い出せなくて、鼻歌でごまかしながらもやもやしますように。

最後に食べようと思っていた月見うどんの卵の黄身を、箸の先でうっかりぷちんと破ってしまいますように。

荷物の到着予定時刻に急な腹痛に襲われ、トイレとドアチャイムの前をやきもきしながら往復する羽目になりますように。

麦茶のティーバッグがポットの中で破けて、飲んだときにもそもそしますように。

よく知っているのに、あとちょっとのところで名前を思い出せない曲が脳内でぐるぐる流れつづけますように。

コンビニで買ったプリンアラモードを、思いっきり垂直に袋詰めされますように。

さして親しいわけでもない親戚のおじちゃんもしくはおばちゃんにハイクのアカウントがバレて、盆正月の集まりや法事の席などで「みんなで○○ちゃんのブログ？ついったー？みたいなの？を読む会」が発生しますように。

洗濯機がすすぎフェイズに入ってから、靴下を片方だけ入れ忘れたのが発見されますように。

チーズフォンデュのチーズが途中でなくなって、角切りパンと茹で野菜をひたすらもそもそ食べる羽目になりますように。

棒つきアイスを取り出すときに棒がすっぽ抜けて、アイスだけ袋の中に残りますように。

こたつをしまった直後に寒さが戻ってきますように。

いろいろ迷って選んだおやつをねこに与えたのに、あっさり砂かけされますように。

スタンプカードがいっぱいになった直後に、店のシステムが変わって使えなくなりますように。

エアキャップをつぶしたときに「プチっ」ではなく「ぷスー」となりますように。

買ってきたポッキーあるいはプリッツが、箱の中でことごとく折れていますように。

プチプチの空気の入りが甘くて、潰そうとするとへんにょりするのにまだ空気が残っている、という微妙な状態になりますように。