アロエさんは軽くため息を吐きながら床のくつしたを拾う。
ほうっておけばいいのに。
手元のカゴに入れたらテレビとビデオのリモコンを拾って棚に上げて鼻歌。
いい天気とは言っていたがまだまだ地面は湿っている時間だ、焦るんじゃない
という顔をしてみせたらこのおふとぅんは諦めたが
気を付けないとあれはわしらまで一緒に洗濯機に放り込みかねん。
それだけは御免こうむる。(一度うっかりハマって死にかけた)
「きねんび」というのはいいものらしい。
「はじめての」というのもいいものらしいから
たぶん昨日は二人にとってすごくいいものだったのだ。
猫の日…[全文を見る]
リーリッルー短篇セレクション 第四回
はじまり by リーリッルー(id:lilliloo)
会社からの帰り道、川べりの鉄塔に鈴成りの神々がぶら下がっていて、「忘れたか」と囁きかけてきた。振りむくと、置き去りにされた凧だった。鞠のような牛のような生物が、子供のころよく遊んだ文化会館の屋根にしゃがみこんで、「無くしたか」と書かれたプラカードを掲げていた。それは遠くにあるガスタンクのようにもみえた。
それはそれとして、ふと目に入った地平線。子供のころから気になっていたけれど、端のほうがめくれかけている。昔は背が届かなかった…[全文を見る]
リーリッルー短篇セレクション 第三回
宵闇のガリレオ by リーリッルー(id:lilliloo)
いつのまにかこの列車に乗っていた。産まれた時から乗っていたのかもしれない。ただ、気づかなかっただけで。
うっすらと西日が差しこみ、けれど視野のほとんどは群青の宵闇に満たされている。列車の乗客はみな個人個人の時間をすごしていて、互いのそれが交わることはない。ゴーストのように半透明な乗客たちの時間が隣接したとき、ぽぅとほの白い灯りが生まれ、揺らめいては消えていく。
車窓から眺める風景は嫌いだ。地平まで赤と黄のかざぐるまが埋まり、…[全文を見る]
リーリッルー短篇セレクション 第二回
Loli & Popby by リーリッルー(id:lilliloo)
ボンネット、パニエ、プリンセスワンピース、おでこ靴。全身をBABY,THE STARS SHINE BRIGHTのロリータファッションで飾りたて、キミはボクの前に立っている。
「――ねェ、さわってもいいのよ」
そう云って笑ったキミだけれど、一体キミはどこにいるんだろう? 触れてみるとコットンはふかふかと沈みこみ、シルクのリボンに足をとられてボクはつるつると滑っていく。どれだけ探しまわっても、キミの中にキミの姿がみつからない。
「――だって仕方ないじゃない…[全文を見る]
気に入っていただけてほっとしました。ありがとうございます。
>どこを見ていたのか
この言葉に、ああ、こういうの、共同作業の醍醐味だよなあ
って嬉しく思っています。
憧れていた方の作品でそんな言葉が聴けるって最高です。
少し早いクリスマスプレゼントをいただいたような気分です。
がっかりされないように、あとの作品もがんばりますね^^
わにの夢
オフィス街で一番高いビルの屋上に巨大な恐竜の卵があって、人々はそれを見上げながら日々の生活を営んでいるのだった。
例えば行き詰まった会議の最中だとか、ミスの責任を押しつけようとする電話を怒りながら切ったときだとか、出退勤時に重い身体を引きずって歩くときだとかでも、ふとビルの屋上でまだら色をした卵が今にも転げ落ちそうな様子をみていると、なぜだか奇妙な安心感を覚えるのだ。
ある専門家が云う。
「この卵は生きていて、厚い殻の中にはタイノレックスが息づいていて、そうしていつの日か孵るのだ」
今日も吹く風は緑に薫り、花…[全文を見る]
募集要項
・ハロウィンをテーマにした短編作品をお願いします
・募集期間 10月25日から27日くらい
・本文とは別に必ずタイトルをつけてね
優勝作の選出法
・29日深夜11時59分、「人気順」で一番上位にあった作を優勝作とします
・優勝作を書いた作者が今年の、かぼちゃ大王なんだよ!
投稿はこちら→ハロウィン超短編まつり(>w<)2010
「緑の三角」
その頃、世界にはまだ色が少なくて小さな穴からあふれ出る色の洪水は、少女には夢のようでした。
畳の上でおはじきにしてひとしきり楽しんだ後、少女は筒を握り締めかしゃかしゃと鳴らしながら
ブロック塀の向こうに遊びにゆきました。「ぽんっ」「しゅーっ」「かしゃかしゃ」「ぽんっ」・・・・・・
繰り返すうち蓋を開ける「ぽんっ」が鳴らなくなったかな、と思うや、少女の手から七色の玉は飛び出して、
原っぱのそこここに噴水のような弧を描いて散らばっていきました。
夏草は少女にとって絶望的な高さで揺れていて、しばらく探してはみたものの数粒…[全文を見る]
『おおきな、まるい、宝石』
「アレクサンドリアという葡萄のような朝」と始まる歌の、このフレーズだけが好きだった。
どうも私は口が卑しい。
この、僅かに青みがかった黄緑への想いは四歳の記憶にさかのぼる。
まだ陽射しのきつい初秋、私は遠足で葡萄狩りに来ていた。
なぜ青い空と陽射しを覚えているかといえば、私が上ばっか見ていたからだ。
葡萄は幼稚園児の手の届かない上空に、夢のようにたくさん、のどかにぶら下がっていた。
幼なじみのナカガワマサオくんのお母さんが一房切って私に手渡し、
「まだ食べられるなら切ってあげるからね」と…[全文を見る]
全角スペースを一回押して、そのあと普通に改行・・・・・・です。
私も今日知りましたwww
「はじめての海」
お昼寝からさめたとき、母が「海へ行って見ようか」と言った。
お散歩でいつもは折り返す国道の向こう側に初めて渡ると、
そこには白く眩しいお砂場が左右にどこまでも続いていた。
きっと潮の匂いもしていたに違いないが、「ほら見てごらん」と母が言った瞬間も
わたしにはざわざわと濁った水音だけがあった。
しかし見えなかった青は、数秒遅れでわたしの視界を覆うや、
その乱暴で無節操な挙動でわたしを恐怖に陥れた。
母が着せたタオル地のワンピースは胸に赤いアプリケがあるお気に入りだったが
手を引かれ水打ち際までこわごわ行くと波が…[全文を見る]