時はしばしば復讐する。が、復讐はしばしば後味のわるいものだ。いっそわれわれはみな他人を理解しようとつとめないほうがいいのではないか、人間というものは一般に、妻は夫を、恋人はその情人を、そして親は子供を、決して理解することがないという事実を承認して、他人を理解しようとすることをやめてしまったほうがいいのではあるまいか? おそらく、だからこそ人間は神を発明したーー理解する能力のある存在を。おそらく、もしおれが理解されたがったり、理解したがったりしたら、きっとおれは進んで信仰に迷いこんだことだろう、けれどもおれは報道記者(リポーター)だ。神は、もっぱら論説記者のためにのみ存在するのだ。
(p.66、『おとなしいアメリカ人 グレアム・グリーン全集14』早川書房)
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