- ----- memo --------- (柏)
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まず、中国における「柏」は
・常緑樹である
・葉および材によい香りがある
というこの二点が大きな特徴となって中国人に神聖視されたとおもわれる。
また、日本における「カシハ」は
・葉が大きく美しい
・枯れてしまってもすぐに落葉しない
という点から、やはり古来神聖視されてきた。
しかし、この二物はまったく別のものである。
この「柏」と「カシハ」が結びついてしまった要因として、中国伝来の辞書・韻書を書き写す際の誤筆写
という点が考えられる。「柏」字と「栢」字があたかも別字であるかのように用いられることがあるという点も、
この説を補強するかもしれない。しかし、その介在をしたとおもわれる「槲」「{木+解}」の二文字は使用頻度も
あまり高くなく、この誤筆写だけで日本人全体が「柏」を「カシハ」に誤同定したと考えるには少々無理がある
とおもわれる。
この大規模な誤同定を引き起こしてしまった原因として、本稿では次のような結論に達した。
中国古典文学上における「柏」のもつイメージと日本古典文学上における「カシハ」のもつイメージには、
以下のように外見の相異からは予想もつかない類似点があった。
・「後彫(凋)」と「枯れてもすぐに落葉せず、枝についたまま冬を越す」という点
・神聖視された樹であるという点
・「椒柏酒」と「御酒柏」など、酒とのつながりがあるという点
・「門閭を守る」と「葉守の神」など、なにかを守ってくれると考えられていたという点
このような類似点をもつことから、実物を見ることのできない大半の日本人が
「柏」と「カシハ」を結びつけてしまったのではないだろうか。
「柏」樹という文字情報を理解する過程において、それが日本人にとってまったく見知らぬ、
想像もつかない樹であったなら、注意深くその実際を確かめたかもしれない。
しかし、こうしたイメージをもつ「柏」という樹は、日本人にとって覚えのある樹であった。
それが「カシハ」だったのではないだろうか。
古代の日本において、「柏」樹を正しく認識するだけの中国書がなかったとはおもわれない。
これは日本の医学・本草学者たちが「柏実」などの薬を正しく認識していたことからもわかることである。
寺井氏はその論文の中で中国本草学の強い影響力をあげ、本草書に接した日本人が「柏」と「カシハ」を
結びつけてしまったのではないか、という主旨を述べておられるが、本草書に接するような人々は注意深く
「柏」のなんたるかを研究し、正しく理解していたというべきであろう。しかし、一般の多くの日本人は
「柏」樹を自分たちの身近な「カシハ」であるとまず感じてしまったとおもわれる。
そのことが本草学者たちのような注意深さをうしなわせ、この大きな誤同定をまねいたのではないだろうか。
このような素地があったからこそ、「柏」を「カシハ」と訓むことが日本の知識人たちに受け入れられたと
おもわれるのである。
http://mayanagi.hum.ibaraki.ac.jp/students/98nagaoka.html
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