「私たちは死んでいくものの疲労については想像が及ぶが、そのはてしない消耗には、読む側の消耗なしにはつきあっていけない。
しかし、マイノリティとしての死者の発信する言葉とは、消耗の言語に他ならないのではないか」
「私たちはいつのまにか死者は静かに死んでいくものだと思いこむようになっている。しかし、これは生きているマジョリティの独断と偏見にすぎないのではないだろうか。マイノリティの言葉を遮断して生きていこうという衛生学がはたらいて、私たちは死者に猿轡をかけてしまっているだけではないか」
「私たちには、血なまぐさい言葉、消耗させる言葉、倒錯的な言葉に対して耳を塞ごうとする傾向が――これはあくまでも傾向なのであるが――ある。
しかし、この傾向になんとかして逆らっていかなければならない」
「文学の疲弊をよそに、言語はいまなお疲れ知らずでいるが、それならば鍛えられるだけ言語を鍛え上げようではないか。マイノリティの声を「雑音」として「破壊的音楽」としてしか聴こうとしない傾向に対する対抗的な傾向を準備するものとして、文学はこれからまだまだ言語にすがりつづけていくしかないのだから」
西成彦『エクストラテリトリアル 移動文学論Ⅱ』(作品社)
さすが、ゴンブローヴィッチ翻訳で素晴らしい手腕(豪腕? たとえようもなく繊細な豪腕!)を発揮した方です。
勝手に引用のことを語る
