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勝手に引用のことを語る

「私は作品を書くとき、読者のことは考えません(読者は架空の存在だからです)。また、私自身のことも考えません(恐らく、私もまた架空の存在であるのでしょう)。私が考えるのは何を伝えようとしているかであり、それを損なわないよう最善を尽くすわけです。若い頃には、私も表現というものを信じていました。 」ボルヘス『ボルヘス、文学を語る―詩的なるものをめぐって』岩波書店
 
拙作『夢詩壷』(http://karakusaginga.blog76.fc2.com/archives.html#all20)という作品の冒頭部、主人公の一人称語りの途中、キャラ同士に、
 
「さっきからずっと、誰に話しかけてるの?」
「読者だよ」
「それ、いないと思うよ?」
 
と言わせたわたしですから、ここは当然のこと吹き出しました。
さすがボルヘス、カッチョエエエ!
ボルヘスを殺せ! と囁いたのはゴンブローヴィッチだったかと思いますが、ボルヘスは殺せません。だって、彼はもうすでに、ウンベルト・エーコの作品でも、そしてまたジーン・ウルフの作品でも「盲目の図書館主」として架空の世界にお住まいになってしまっているんですもの。無理です。
永遠の書架にたちて。
そう、彼は、本当に、真実、それこそ文字通り、永遠の書架の前に佇むひととなったのですから。