「(略)布団にもぐりこんだ。別の子が、そこにいた。小さくて、細くて、とても冷たかった。暖かさを求めて別の子が体を擦り寄せてきたとき、自分はもう小さくない、とビンは思った。今のビンは、大きくて暖かい誰か、強くて、包容力があって、人を守ることのできる誰かなのだ。気分が浮き立つようなことだったが、身が引き締まるような思いもした」ジーン・ウルフ「風来」より
いっぱんに、たいへんに難解だと評される小説を書くジーン・ウルフではある。だがわたしは好きだ。大好きだ。彼の小説はどこをどうとっても「フェア」で、また非常に「マッチョ」ではあるけれども、『新しい太陽の書』のセヴェリアンのいくつかの告白といい、この描写といい、「本を読む孤独な少年」であった自身を惜しげもなくさらし、いまもまだそうであるとその「小説」が語っている点で、どうしてもどうやっても嫌いにはなれない。
勝手に引用のことを語る
