id:florentine は
florentine(磯崎愛)のことを語る

「歴史は勝者が書く。伝承は民衆が紡ぎ出す。文学者たちは空想する。確かなものは、死だけである」
ダニロ・キシュ『死者の百科事典』より
 
ヴォルテールの手紙を、その恋文を抜粋していたのはキシュだっただろうか。
キシュのはずだが、なんの本かは忘れた。メモったのが見つからない。
  
よくわからないけど、
何かに、
追いやられてる気がする。
ほとんど焦燥のようなものが、肌をなめている。
ツライ。
というか、せりあがる何かが怖い。 
 
そう、ヴォルテールの「カンディード」だ。
誰かが言い出すのを待っていたと書いてくれたひとがいる。
言い出せなかったのは、たぶん、
「ここは、何にも変わらないのね」と呟いて去っていったご婦人の背中をわたしが忘れないからだ。おそれたのは、あの複雑にすぎる、強烈な感情の奔流を目の当たりにし、けれどわたしの存在を綺麗に忘れたひとがいるからだ。
安堵と憤りと恨みと悲しみと呪詛と寿ぎさえも感じられたあの横顔を、わたしはいつか、なんらかの形で書くことになるだろう。
 
やくにかげつ。
ようやく、ふたつき。
 
言葉は遅い。
が、
どこかへはとどく。きっと。