~勝手に引用(笑)~
「近頃は、本当に誰も、夢なんかマトモに見ないのよ」
「私、みるよ」
「だから、そういう貴女だから」
獏はそこで言葉をとめた。それからもう一度、今度はやけに盛大なため息のあとに続けた。
「誰も私の夢を買わないわ。たまに買うひとがいても、自分勝手な夢しか見ないの。そういうのは、私の滋養にならないの」
「じゃあ、それならそうといってくれれば良かったのに」
姫香は、もうすっかり緊張をといて、だったらさっさと買ったのに、と口にした。
「それじゃダメなのよ。個人的な希望や願望の充足を願う夢っていうのは、あたしを疲弊させるだけなの。たとえあたし自身を救おうとするものであっても」
「なんで?」
「新しい世界を夢見ることに憧れる、純粋な欲望だけが、私を潤し、肥えさせる。そうして私は新たな夢を紡ぐことができるの。夢見ることは、この世を創造するただひとつの力なのよ。」
「うそみたい。それ、なんかの宗教?」
「姫香、違うから。どっかでヴェルヌもいってるわ。想像力だけが世界を変えるの」
素晴らしく当然のことのように、獏がつづけた。
「だってそうでしょ? こうじゃないかって、こうだったらいいなっていうことでしか、この世は動いていかないものよ。夢は個人の神話なだけじゃないの」
「じゃあ願えば叶うっていうのと同じじゃない。どんなに願ってもダメなことだってあるわ。個人的な希望じゃなくても、世界平和とか?」
獏が、闇のなかでしずかにこたえた。
「そこから先は、貴女たちの問題。私は神様じゃないから。どちらにせよ、しょせんこの星の薄皮一枚に守られているだけの生き物なのよ。そのことは、貴女のほうがよく知っていると思うわ」
『夢詩壷』より抜粋。
http://karakusaginga.blog76.fc2.com/blog-entry-180.html
なんか不穏なとこで切ったけど(笑)。
「想像力だけが世界を変える」、ヴェルヌが何の本(書簡かな? なんだっただろう?)でそう書いてたか今は本当に忘れたけど(笑)、でも、この言葉には確かな手応えがあると思う。
いたずらな「期待」ではなく、「未来」を築くための確実なエネルギーとしての「希望」をこそ「想像力」と、わたしは呼ぶ。
florentine(磯崎愛)のことを語る
