id:dominique1228
勝手に引用のことを語る

(・・・)じつはどんな人も長年なにがしかの奇形性を持ちながらえているのに違いないのだ。標準からはずれたものを持っていない人間などごくごく少数である。それならば、おおかたの人が自分の「存在のあわれ」を感じているのだろうか? もしそうならば、人は自身の中にある奇形性を、どのように見据えるのだろう? 目をそらすのか? 凝視するのか? こころよく思うのか? かなしく思うのか? それら全部をふくめて「あわれ」なのか? じつになんとも、わからないのである。
―「わからないことなど」より

ゆっくりさよならをとなえる. 川上弘美. 新潮文庫. p.201-202.