【ナポリの乞食】
ナポリに住んでいたとき、わが王宮の戸口に女乞食が立っていて、わたしは馬車に乗る前にこれに硬貨を投げ与えていたものだ。ある日、この女がまるで感謝のしるしをみせないことに不意に戸惑って、わたしは女をじっとみつめた。乞食だと思っていたものが実は赤土と腐りかけたバナナの皮のつまった緑色の木の箱だということが、まさにこのときわかった。
___マックス・ジャコブ『骰子筒』(1917)
ボルヘス怪奇譚集(柳瀬尚紀訳)晶文社. p. 65.

【ナポリの乞食】
ナポリに住んでいたとき、わが王宮の戸口に女乞食が立っていて、わたしは馬車に乗る前にこれに硬貨を投げ与えていたものだ。ある日、この女がまるで感謝のしるしをみせないことに不意に戸惑って、わたしは女をじっとみつめた。乞食だと思っていたものが実は赤土と腐りかけたバナナの皮のつまった緑色の木の箱だということが、まさにこのときわかった。
___マックス・ジャコブ『骰子筒』(1917)
ボルヘス怪奇譚集(柳瀬尚紀訳)晶文社. p. 65.