先日、富山市で日本音楽療法学会が開かれました。そこで私は、「こきりこ節」という唄と踊りを目にしました。……
今回の学会では、音楽の臨床利用についての発表がありました。米国・コロラド州立大学の脳神経学者マイケル・タウト博士によると、人が音楽を聴いた時、聴覚中枢以外の脳の各部、前頭葉、側頭葉、後頭葉などに微妙な影響があり、脳の機能が活発になることが実証されたということです。
タウト博士は、「音楽は脳の生物学的言語」と結論されました。音楽は、病気の治療やリハビリテーションのためのある種の「言語」になっているというのです。人間の心は言語によって伝達されますが、音楽はいわば、第2の言葉となるわけです。
冒頭の「こきりこ節」は、2400人収容のホールで披露されましたが、観衆が手拍子を取り、広い会場がみるみる熱気にあふれていくのを見て、私は確信しました。音楽を聴く、音楽を一緒に奏でる、音楽をみんなで楽しむということは、心の癒やしだけでなく、体の癒やしにもなるのです。……
――日野原重明「こきりこ節と音楽療法」(100歳・私の証 あるがまま行く 朝日新聞土曜版10/15付掲載分)
