ランもアルタイも言葉に出さなくてもわかっていた。新しい街ができたらそこにもどればいいということを。彼らの世代が終わっても、あとに生まれた者たちがその街で暮らすだろうということを。それは頭でひねり出した考えではなく、体に蓄積された知識だった。ニンゲンのいる場所ならばかならず自分たちの街を築くことができる、そう過去の歴史が教えていた。彼らの生命力は逆境において強められ、生きる知恵は困難に直面するごとに倍増してきたのだった。キャンプの暮らしはその自負に支えられていた。
ソキョートーキョー(鼠京東京). 大竹昭子. ポプラ社. 2010. p. 245-246.
