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勝手に引用のことを語る

 最初は<つらい月日も時が過ぎればなつかしい思い出に変わるのさ…>という流行歌のような意味だと思った。のど元過ぎれば熱さ忘れる、くらいの。でも「つらい日々さえも、いつか時間がその苦しさを忘れさせてくれる」のではなく、<憂しと見し世ぞ>__つらかったあの時代だからこそ、今は恋しく思えるのではないか。近ごろ、そんなふうに考え始めている。

佐藤真由美 『恋する言ノ葉』 p.170-172. (集英社文庫)