人はだれしも、攻撃や破壊ヘやみくもに突っ走る残忍なけだものを心の辺縁につなぎとめ、飼いならしている。
だが、じつは血も涙もない、けだものの方こそ飼い主なのではないか。ひっそりと息を殺して、我々に好き放題させているが、不意に引き綱を思い切り引っ張って、思うがまま支配しようとする。
カポーティのノンフィクションノベルを原作としたこの映画は、米国カンザス州の農場主一家惨殺事件を題材にしている。二人組の犯人の一人は時に道徳を説く夢想家だが、突如、人が変わったようにショットガンをぶっ放し、家族4人を皆殺しにしてしまった。
劣等感にさいなまれたトラウマが、暴力の回路をつなぐショートカットになる。カポーティ自身もその衝動の絶対的支配に気づかされ、おののいていた。
__朝日新聞土曜版「be」青12/24、再読こんな時こんな本「『ワル』と呼ばれて」、見るなら 『冷血』
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