替え歌解題
大学の将棋同好会。うちは卒業式後、卒業記念対局が行われるのが習わしだ。四年間ずっと勝てなかった彼女と、一局めに当たった。
彼女に勝てなかったのは僕だけじゃなくて、勝てた会員でも辛くも一勝がせいぜいだった。彼女こそが僕らの学年の「王将」だった。
この対局が終わると、彼女はすぐに留学する。そんな最後の一局だから、無様には負けたくないという気持ちと、平常心でいつもの様にささなきゃ、という気持ちが鬩ぎ合う。
彼女にはいつも、僕の勇み足の飛車を囲まれて、そこからグズグズに負けるパターンが多い。時計を見ながら、ああ、そこの飛車には気づかないで! そう思っていたのに、いつの間にか彼女の飛車は陣地を越えて龍王に、僕の振り飛車は囲まれていた。
容赦なく取られていく駒、攻めてくる彼女。
さて、どうするか。
