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自分(id:spectre_55)のことを語る

引き続きネタバレバリバリな「サバイバーズ・ギルト」話なのですが。

……松本さんの演じた役が、これまたいい役だなあと思ったのですよ。

「千葉さん」は(この名前…)、居酒屋でバイトしながらバンドをやってる29才、
曲がことごとくミスチル風味になることに悩んでたり、呼んでないのに自宅に来ちゃう「押し掛け彼女」的な女性に困ってたり、
かと思えばちゃっかり彼女をいただいちゃおうとしてたり(未遂)する、
あー、下北とか高円寺あたりにはこんな兄ちゃん居るかもなー、的な人物なんですが、

彼が作曲に煮詰まって、ふと手すさびにギターで「ドラえもん」のOPを弾いたら、隣の部屋に住んでる子供が喜んだ、
それが嬉しくてちょっと一緒に歌ったりしてるうちに、なんとなく曲作りもうまく行ってしまったりしてた、ってエピソードがあってね。

その子供が酷い目に合わされてた事を知った後、「千葉さん」は、何かおかしいとは思いながら何もしなかった、
……どころか、その子に励まされちゃったりもしてたことを悔やんで、自分の歌なんて何の役に立つんだ!的に荒れるんだけど、
「押し掛け彼女」は彼に、「でも、歌ってる間はその子は笑ってたんだよね?……これからだよ」的な事を言うのね。

それがすげえいいなーと思ったの。
キツい状況にある人に対して、音楽とか芝居とか(「芸術」って言うと何か高尚すぎる感じだなー、「娯楽」とか「芸能」?)が出来る事とかってあるの?って事を象徴するキャラクターなんだなあ、と思ったというか。

千葉さんは別に、隣の子供の為に!と思ってドラえもんを弾いてあげたんじゃなく、
自分のやる事に思いがけず反応があったのが、喜んでくれたのがただなんとなく嬉しかった、だけなんだろうけど、
そのことが、隣の子供にとっては、辛い中でのちょっとした救いにはなってしまっていたんだろう。

「パンと薔薇」っていう例えで言うと、
隣人にパンをあげようとはしなかったにしろ、意図せずして薔薇を差し出してはいた、それが「千葉さん」というキャラクターだとすると、
震災で実家を流されて、現地のあれこれも身近なものとして目にしてる(であろう)、この劇の作家兼演出家がさ、
「男気を見込んで」出演依頼を出した松本さんをそーいう役に当てた、ってのも含め、やりがいのある役だったんじゃないかなーとか邪推する次第。

……あとは。中国人役、二人とも日本人の役者さんなんだけど、台詞はほぼ中国語!だったのがすげえと思ったです。
舞台セットはアパートの部屋なんだけど、壁の上というか蘭間のあたりに字幕で日本語訳が出るの。いわゆる「嫌中」な感じはないキャラクター描写も含めて良かったです。

金があったらもう一度見たかったかも知れない……