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自分(id:spectre_55)のことを語る

で、「サバイバーズ・ギルト」@下北沢駅前劇場の話を。ネタバレアリアリです、ご注意を。

……ボロくて壁薄いけど、駅近・家具付・家賃格安、おまけに管理人の面倒臭がりのせいで保証人も不要、という「ハイツ木蘭」。
都内のどこかにあるこのアパートには、オーナーの親から管理を任された若い管理人をはじめ、
アラフォー女のショップ店長や子持ちのホステス、売れないバンドマン、中国人留学生といった面々が、
お互いに関わりを持たないままそれぞれの暮らしを送っていたけれど、
「隣室」から漏れ聞こえる気配から、彼らの日常には少しずつ不穏な気配が漂い始めて……という感じの物語でした。

「サバイバーズ・ギルト」とは題されているけれど、正確に言えば死人は出ていない(はず)。
ただ、自分の住んでるアパートの同じ一室で酷い事が起きていた、その気配に薄々気づきつつも、それに耳目を塞いでいた住人たちの心情を例えてそう言ったのかと。
で、酷い事ってのは「児童虐待」。

留学生のところに身を寄せている、祖国に息子を残して働く不法滞在の中国人が、強制送還の危険を顧みずに通報したことで(弱者が弱者を助けようとするんだよね…)、
事態は明るみに出るんだけど、登場人物たちが、自分を責めることはあっても、加害者たる母親(たち)を手酷くなじる場面とかがないのがちょっと「おお……」って感じでした。
自分の生活ばかりにかまけてて彼女(ら)を孤立させた事、隣人への無関心こそが一番の問題だ、って観点なのよね。
事件後、面倒臭がって店子それぞれとあまり関わろうとしなかった管理人が、定期的にみんなで顔を合わせる機会を作って、そこに事件を起こした母親をも迎え入れる、っていうオチも含めて、
重い中にも希望というか、「そんで、どうするの?」ってのがちゃんと呈示されてる話なのが良かったです。