そういや松本さんの主演舞台『ヒカケン』の感想を、書きかけたまま2週間放置してたのだった。
って事で、以下、ダラダラ長文注意、で。
学祭で「超能力ショー(手品ショー)」を行うのが恒例の大学サークル、「ヒカケン(非科学的超常現象研究会)」。今年の主役はなぜか、サークル一気弱で不器用な四年生、隆之介。
やっかみ込みでショーの成非が案じられる中、サークル仲間で隆之介が密かに思いを寄せる紗江は、彼が恐るべき力を発揮してショーが滅茶苦茶になる、という予知夢をくり返し見ていて……というようなお話。
学園コメディかと思ってたら、その要素はありつつも後半以降はかなりシリアスで、SFフレーバー入ったヒューマンドラマ、な感じだったのが良い意味で裏切られた感がありました。
正体バレした超能力者が迫害される、ってのは古典的なパターンですが、テレキネシスなのがバレた隆之介に辛く当たるサークル仲間たちにも、それぞれ事情があって……っていう、その「事情」がすげえ「今」な感じでねえ。
承認欲求をもて余し、Twitterで隆之介の起こした事を拡散→炎上を招いた女の子には「母子家庭の貧困」に苦しんだ過去があり、
内定が貰えないせいで学祭にも参加できず、隆之介の正体を知るやいなやその鬱憤を友達なはずの彼にぶつけちゃう男の子は「就職氷河期」の犠牲者と言えるんだろう。
で、俺が一番印象的に思ったのは、最後まで隆之介の力、というか超能力の存在を信じない後輩、いつも黒づくめでフード被ってる光一というキャラクターだったのです。
入試トップの秀才である彼は、超能力の存在を否定するためにヒカケンに入るんだけど、それは宗教カルトにハマった両親の目を醒まさせたい一心で、だからこそ、隆之介の力が本物だと分かった時に、暴れるしかなくなってしまうのね。
それを、かつて力が原因で孤立したり引きこもったりしてて、今も、ずっと封印してた力を急に使ったせいでヘトヘトになってる隆之介が必死に抱き留めて宥めるシーンがかなり良かったのですよ。
自分に咎のない事に苦しめられてきた、という部分では似た者同士である二人が、その苦しみ故に傷つけ合うってのはありふれてるんだけど、そうではなくて、ズダボロになりながらも、片方が片方に労りの手を差し伸べる、ってのがねー、いいなあ、じんわり来るなあ、と。
見てて『きっと、うまくいく』を思い出したのも、大学が舞台で、主人公が自分の正体を明かすことができない人で、ヘテロ恋愛要素はありつつかなり友情押しで、いろいろ辛い話もあるけどハッピーエンドで、そして、根っからの悪人がいない話である、というあたり、かなあ。
いやほんと、松本さん主演舞台が、予想以上に俺の好きな感じの話だったのでラッキーでした。これなら二回見てもいい……というか、チケットが買えて身体が空いてたら、あと一回ぐらい見たかったなあ。中野なら通勤路途中だしね。
