【以下、映画「アルバート氏の人生」のネタバレあり】
見られなくて悔しいから、俺はeiga.comやら何やらで「アルバート氏の人生」の感想やレビューをちょっと検索して読んだりしてたんだけど、
「アルバートが何でヘレンに惹かれたのか分からない」とか、「男装すると女が好きになるものなの?」とか、「辛い人生だったけど、最後に恋する事ができたのだけは良かったのかな」みたいな感想に「へ?」ってなった。
なんでかって言うと、俺にはアルバートという人は「『初恋(恋愛)以前の人』というか、セクシュアリティ(性的指向&嗜好)を欠いた人というか、そのあたりを自覚できないまま一生を終えた人、に見えるから。
そのへんは最愛の"妻"を亡くして悲歎に暮れているヒューバートに、「じゃあ一緒に住んで商売をやろうよ」みたいな事言っちゃうシーンに明らかだと思うんだよねえ。
デートしててもスキンシップすらろくにしないアルバートをヘレンが不審がるとこと、さ。ヒューバートが奥さん膝に乗せていちゃついてたのとは対照的に。
じゃあなんでヘレンに言い寄ったのかって、アルバートにはヒューバート"夫妻"に対する憧れあったから、ヒューバートが「君の勤め先にいるヘレンって可愛いよね」みたいにチラッと言ったのを「あの人がいいって言う子なら」って鵜呑みにしたんじゃないかなあ。何せ、本人には誰がいいのという感覚すらなさそうだし
で、少し経ってからは、未婚の母にされ捨てられてしまいそうなヘレンに対する同情が沸いたんだろうと思う。私生児として苦労してるからね、アルバート。
いずれにせよ、そこに色恋の兆しは感じなかったんだけどなあ……。世間にはあれが恋に見えるんだろうか。
まあ、もう孤独は嫌だ、誰かと穏やかに暮らしていきたいという気持ちは、ある意味色恋よりも切実にも見えて、そこがすげえ切ないのですが。
ひたすら身を屈めて、自分を圧し殺してばかりの人生の最後に、ありのままで接することのできる友達が出来て、「自分も誰かと生きていくことが出来るのかも知れない、一人ぼっちでいなくても済むのかも知れない」というささやかな希望が持てた事は、アルバートにとって救いだったのだろうか。
彼の最期の表情、うっすら微笑んでたような記憶があるんだけど。
