この絵の不思議な動作は、ガブリエルが 多くの子を産める女性であること、
指輪は、アンリ4世に対する ガブリエルの結婚願望を表わし、
そして 背後で召使がおしめを縫っている、という説。
しかし、問題は この絵が描かれた時期。
アンリ4世が、ガブリエルの死後にこの絵を見たとすると、解釈は変わる。
(1599年4月、ガブリエルは アンリ4世のもとを離れパリへ。一説では、
友人宅で食事を摂ったあと苦しんで死んだ(=毒を盛られた)と言われ、
また、妊娠中毒症だった とも言われる )
ガブリエルの死後、この絵を見ると―
指輪は、ついにはめてもらうことができなかった(=王妃になれなかった)ことの暗示、
召使が縫っているのは死装束、燃え盛る暖炉の炎は 無念の火・・・
そのようにも解釈できるというのである。そしてこの絵は、描かれた当時は、
人目に触れるものではなく、アンリ4世 ただひとりのために描かれたものだった。
美の巨人たちのことを語る