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美の巨人たちのことを語る

 
ちなみに、"ミステリー絵画シリーズ" として この番組で取り上げられた
『イカロスの墜落の風景』 であるが、そのミステリー …
なぜ、よりによって 海に墜ちるイカロスを誰も見ていないのか、
なぜ、羽根を固めたろうが溶けるほどであったはずの太陽が 水平線の向こうに沈みかけているのか―
 
ブリューゲルの時代、ベルギーは、スペインのハプスブルク家の
圧政に苦しんでいた。そして、圧政に抵抗した多くの名もなき市民が死んでいった。
 
 
つまり、この絵の太陽は、スペイン ― フェリペ2世を表す。
羽根をろうで固めて必死で飛び立つも、太陽の熱によって ろうを溶かされ、
むなしく海に墜落するイカロスは、勇敢に抵抗し死んでいった、名もなき市民たちである。
堕ちるイカロスに見向きもしない 農夫、羊飼い、漁師らは―
弾圧の中で声をあげることのできない人々、自分が助かるには、
死んでいく同胞に向かって 見て見ぬふりをするしかなかった人々である。
 
しかし、この絵の太陽 = ハプスブルク家(スペイン/フェリペ2世)は、
ろうを溶かすほどの強烈な日差しを降らせることなく、
水平線の向こうへ沈みかける様が 描かれている。
これが示すことは つまり、 "ハプスブルク帝国にも いつか必ず斜陽のときが訪れる" ―
 
『イカロスの墜落の風景』 は、このような解釈も なされている作品である。