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美の巨人たちのことを語る

 
しかし、この作品のX線写真を撮ったところ、
出来上がった作品では 構図から消えているものの、
ラフな下描きの段階では、草むらで用を足す農夫が 小さく描かれていたことがわかった。
 
これが、一見すると脈絡なく(本当は寓意がこめられている)
変わった人物像を描きこむブリューゲルのスタイルに一致する、と 判断された。
更に、ブリューゲルはもともと、イカロスの神話を
版画にもするなどして、たびたび自らの作品の題材にしている。
 
それにより 研究者は、この 『イカロスの墜落の風景』 について、
もともとはブリューゲルのオリジナルであった作品を、後年、誰かが写し取り
(古い絵画で 模写はよくあること)、その時に いくつかの部分を変更して
描いたのではないか、と 考えているとのことである。
というのも、このような個性的な構図(主役のイカロスが画面の隅、等)を
発想できる画家は、当時ではブリューゲルしかいない、と考えられたためである。
 
本人の描いたものか 後年の模写かが断定できないため、
王立美術館が 作者の表記に「?」を付けたのは、2002年のことである。