そういえば、昔は、ホラーだけでなく、それぞれの画家の画風にもよるのだが、シュルレアリスムの絵画も怖かった(今はどちらも平気)。
ただ、当時から、全部が怖かったわけではなく、ルネ・マグリットは怖いどころか むしろ好きで、ポール・デルヴォーも平気。 デルヴォーが平気だったのは、デルヴォーを知るきっかけとなった本の、本そのもののイメージと結びついた状態で印象に残ったため、というところが大きいと思う。
もっとも怖かったのは、ダリだ。 あの世紀末感が怖かったし、子供の頃の教科書に載っていたダリの代表作が、偶然にも、どれも私が怖いと感じるタイプのものばかりだった。 教科書に載っているその数枚だけで既にじゅうぶん怖かったため、それ以上踏み込んでダリの作品を知ろうとすることもなかった。 が、随分あとになって、ドキュメンタリー番組等で、ダリ本人についてのエピソードや、昔教科書に載っていたもの以外の作品を知り(大阪市が持っている 『幽霊と幻影』 を初めて見たのも多分この時期)、自分が必ずしも怖いとは感じない作品もあるのだとわかった途端、ダリ作品への恐怖感が急速に薄れた。
そして、ダリに限らず、シュルレアリスム絵画そのものへの恐怖感がなくなったのは、つまるところ、シュルレアリスムよりも何よりも、現実世界のほうがよっぽど怖い、と改めて感じて以後だと思う。