映画館にて
私の場合で、相手があまりにアレだったために わりとはっきり相手に言ったケースというと (昨日ハイカーさんが遭遇されたケースから考えると、私のはたいしたことなかったような気がしてきたが)。
その時もちょうどお正月休みで、なおかつ作品的にも満席になることが容易に予測できたため、隣席に人がくることを避けるのは無理でも せめて片側だけにとどめたいと思い、早い段階でいちばん端の席 (右側は壁) を予約。
行くと、私がおさえた席に誰かが座っている。周囲はすべて埋まっており (実際その回は満席になった)、私の席の隣だけが空いていたので、本来ならその空いた席に座るはずだった人であろう。そして 中間の位置の席といちばん端の席とを間違えることは さすがにあまりないと思われるので (チケットを買う際に認識しているはず)、私がなかなか来ないから もういいと思って移ったのだろう、と察しがついた。
たしかに 到着はギリギリになってしまったが、ギリギリでも席を確保できてこその指定席制。なおかつ、相手が年配の男性だったので こちらが「あの〜すみませんが……」みたいな感じだと舐めてかかられるだろうなと思い、意識的に、わりと強めに「私 そこの席なんですけど」とその人に言った。
すると その人は、悪びれもせず「あ、そちらどうぞ」と、私に向かって 本来その人が座るはずだった席を指す。
その人も、満席で両隣埋まった状態で見るよりは 端がよかったのだろうけど。しかしそれなら、本人が事前に端の席をおさえればいいだけの話である。そして「そちらどうぞ」というその人の言い分自体がなんだそれ案件であるゆえ、私はさらに語調を強め
『い い え、私 そ の 席 の チ ケ ッ ト 買 っ た ん で』
とその人に言った。
すると ようやく、やれやれ仕方ないなあ、とでも言いたげな態度で本来の席に戻ったその人。いやいやいやいやなんやねんそれ、やれやれはこっちの言うことやろが、と イラッとしつつ、これから3時間、こんな人が隣に座ってんのいやや…… (そう、上映時間およそ3時間の作品でした) と思いつつ、映画を見る私。
そう、もう映画は始まっている。その数分後、その人のかばんから携帯の鳴る音が聞こえた。ただでさえイラッとしたあとなため、切っとけよ、と思って再度イラッとする私。かばんから携帯を出すその人。イラッとはしていたが、出したのは切るためだろうと思ったので、仕方なくそのまま何も言わずに静観した私。
すると なんとその人は、携帯を切るどころか、おもむろに「ああ、今映画見てんねん」と通話し始めた。上映中に、である。すぐ切るから、とか そういう意味の言葉は一向に聞こえてこない。言うに事欠いて「今映画見てんねん」である。
その瞬間の私には、座席云々の時のようなイラつきはもはや起こらなかった。なぜなら、驚きがそれを上回ったからである。
通 話 て。