ミルクパンにココアと砂糖を入れ、少量の牛乳でじっくり練ってから、さらに牛乳を加えてのばす。それを弱火にかけてゆっくりとあたためる。時折木べらでかき混ぜる。
次第にココアの甘い香りが、キッチンいっぱいに漂ってきた。
「なんか、うまそうなにおいがする」
「んー、ちょっとひさしぶりに飲みたくなってね」
ふちをぐるりと、細かな泡が取り囲んできた。
スプーンでひとすくいし、口に入れる。
「あつっ」
「そんなに?…唇に泡がついてるよ」
「味見してみる?」
訊くと、ちょっと頬を赤らめ、目をつぶった。
先ほどよりもぷつぷつ言っているココアをスプーンにすくい、飲ませてやった。
怒られた。
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