満開の桜の枝の向こうに、青空が透ける。池は日差しを浴びて水面がキラキラと光り、風はかぎりなくやわらかで、甘い。
ペットボトルのお茶を飲みながら、隣を歩く人の存在すら忘れかけて、ぼんやりと歩いていた。
「結婚しようか」
唐突に、右上から降ってきた言葉の意味を正確に理解するまでに、時間がかかった。
「はい?」
「結婚。しない?」
眼鏡の人は表情一つ変えていない。つまらない人だ。
「なぜ今」
「天気がよくて、気持ちいいからさ。結婚しようよ」
「なるほど。じゃあ、お天気がよくてとても気分がいいので、承諾しましょうか」
超短編のことを語る