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超短編のことを語る

懐かしい匂いがする。誰かの家、いつか泊まった宿。
木の香りだろうか。
小さなランプがテーブルごとにつるされていて、ランプの下だけがスポットライトを当てられたように明るい。私はすみっこの暗がりに身を潜める。
私は、あらゆる物事から、全速力で遠ざかろうとしているのだ。
ここで今、眠ってしまいたいと考えている。
レトロとかくつろぎとか異国情緒とかノスタルジーとか、鼻で笑い飛ばしたくなる言葉の数々に埋もれながら。
コーヒーが永遠に運ばれてこなければいいと、考えている。