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超短編のことを語る

ヒヤシンスの苗をもらった。
水を与えると、日に日につぼみがふくらんで、あっという間に、青い花を咲かせた。
たった3つきりの苗は、恐ろしい勢いで1DKの空間に香りをいきわたらせ、今や私の部屋はヒヤシンスで侵されている。
私は自分の部屋に違和感を覚え、裏腹にヒヤシンスは堂々と咲き誇っていた。
あまりの匂いに噎せ返り、私はとうとう枕と掛け布団を持って、お風呂場へ移動した。
乾いたタオルで浴槽を拭きながら、なぜ私が部屋を出てきているんだろう、とぼんやり思った。
鼻の奥で、ヒヤシンスが冷たく香った。