アイスコーヒーの氷が全部溶けた頃、父が口を開いた。
「……あの男は、独り身じゃないな」
私のグラスはすでに氷までかじられてからっぽだった。
「…俺が言えたことじゃないが、誰も幸せにならないぞ。……お前だって知ってるだろ」
父のアイスコーヒーをたぐりよせて、黙って飲んだ。
「殴れないよ。お前も、あの男も。…お前代わりに俺を殴るか」
「…意味ない、それ」
喉の乾きはおさまっていたのに、初めて発した声は少しかすれた。
そのまま、涙が出てきた。
超短編のことを語る
アイスコーヒーの氷が全部溶けた頃、父が口を開いた。
「……あの男は、独り身じゃないな」
私のグラスはすでに氷までかじられてからっぽだった。
「…俺が言えたことじゃないが、誰も幸せにならないぞ。……お前だって知ってるだろ」
父のアイスコーヒーをたぐりよせて、黙って飲んだ。
「殴れないよ。お前も、あの男も。…お前代わりに俺を殴るか」
「…意味ない、それ」
喉の乾きはおさまっていたのに、初めて発した声は少しかすれた。
そのまま、涙が出てきた。